NEXCO 中日本 中日本高速道路株式会社




2009年09月18日矢野会長定例記者会見

会見要旨

(司会)

それではお時間になりましたので、ただいまより定例記者会見を始めさせていただきます。それでは、よろしくお願いします。


(会長)

NEXCO中日本代表取締役会長CEO・矢野弘典

どうもみなさんこんにちは。よろしくお願いします。
今日もたくさんテーマがございますが、最初に一通りご説明をさせていただこうと思います。
最初に、恒例になっております事業の概況、8月のご報告でございます。まず高速道路の営業状況ですが、料金収入は前年同月比でマイナス24.8%です。高速がマイナス28.0%、一有がマイナス31.7%となっております。通行台数の方ですが、プラス3.4%でありました。高速がプラス2.7%、一有がプラス5.9%です。去年の8月は天気が悪くて、少し交通量が低かったということがありますから、今年の8月に通行台数が伸びたということをそのまま喜ぶというわけにはいかないと思いますが、若干交通量が増えたということです。
いつもご報告しております、車種別の状況を申し上げますと、これも例月とだいたい似たような感じでございます。軽自動車が107.7%、普通が105.5%、中型が91.1%、大型が88.5%、特大が86.6%です。走行台・キロで申し上げますと、軽が114.9%、普通が114.9%、中型が90.8%、大型が89.9%、特大が89.5%というふうになっています。それから、この傾向、通行台数は何とかなっているけれども料金が大幅に減っているというのは、これは各種割引額の大幅な増加によりまして、減収になったということでございます。

ETCの割引額ですが、368億円ということで、去年が163億円ですから、相当大幅に増えています。その結果、ETCによる割引率、これが47.1%です。ETCの割引がなかった場合の料金収入は、当月計の413億に割引額を足すわけですけれども、781億円ということになっておりまして、それを比較しますと前年比で5.6%増ということになっています。それから建設の状況については、先月と変わっておりませんのでここに記載のとおりでございます。
それから、ETCの普及状況ですけども、月平均利用台数も16%増、日平均利用率が83.4%というふうに去年に比べて10ポイント増えておりまして、大きな変化になっています。もっと直近の状況を見ますと、9月4日から9月10日の数字が84.3%ということで、84%を超えました。平日、土日休日ともにです。先月の8月14日から8月20日に比べましても大幅に増えているということであります。

それから、車載器取り付け累計台数ですが、7月に比べて69万台増、2.5%増ということで2779万台になっています。

それからサービスエリアの状況ですが、売上は103.7%となりました。内訳を見ますと飲食が107.3%、物販が110.6%、飲食・物販の両方を合わせますと、109.3%になっています。サービス部門は111.4%、それからGS、ガソリンの部門ですがこれは88.1%です。実は数量は、128.0%というふうにたいへん増えているんですけれども、レギュラーで58円の単価差がありまして、その結果、売上高では88.1%になっています。広告部門は166.7%であります。以上が8月の事業概況でございます。

2番目に、東名牧之原地区の震災復旧状況について報告します。ご承知のとおり、8月11日の早朝に地震がありまして、のり面が崩壊したわけです。15日の24時で通行止めをやりまして無事開通をしたわけでありますが、その後、復旧を目指して検討委員会を始めております。開通した翌日の17日に第1回を開いたわけですが、10月中には結論を出すつもりであります。その詳しい中身につきましては吉川常務からご説明させていただきます。

 


(吉川常務)

保全・サービス事業本部長の吉川でございます。
それではお手元の資料に基づきまして、応急復旧の現況報告をさせていただきます。今、会長から話がありましたけども、応急復旧までの115時間については、お手元の資料にまとめてありますのでこちらをご参考にしていただきたいと思います。

現況報告の冊子に書いてございますように、今回ののり面の崩壊原因としては、地形、地震強度それから降雨などの複数の要因が重なって発生したことが想定されるということです。この原因究明と本復旧対策工を検討するために、検討委員会を行っております。第1回は、先ほども話がありましたように8月17日に行いましたが、今度、第2回を9月28日(月曜日)に、東京で開催したいと考えております。第2回の検討委員会では、その後の現場状況と、応急復旧工事へのさらなる強化対策の概況について、報告させていただきたい。なお、災害の原因及び本復旧対策については、第2回検討委員会により検討していくということでございます。

本日は、その現場の状況を簡単に説明させていただきます。2ページ目でございます。現地状況と現在の作業状況でございますが、応急復旧したのり面につきましては現時点では安定した状態にあります。それで現在の作業状況でございますが、まず盛土や基礎地盤の地質の状況、それから地質の状況などを把握するためにボーリング調査を実施しております。ボーリング調査は完了いたしました。調査結果につきましては現在整理・分析中でございます。崩落しました上り線側の方で10ヵ所、下り線側の方で2ヵ所ボーリング調査を行いました。この写真にあるとおりでございます。
それから応急復旧が完了した後の本復旧工事に備えまして、一般道路からの工事用進入路を整備しております。応急復旧時は本線、高速道路上から作業を行っていたわけですが、今度は下の方からの進入ということで、下の方からの進入路を作っているわけです。写真にありますように河川部の渡河部分、それから進入路の整備、崩落土砂の整理、それから排水施設などの整備を行ったところです。

続きまして3ページ目です。更に盛土の追加補強対策ということで、今後台風や秋雨前線などによります大雨も予想されるために、斜面の安定性向上を図る目的で検討委員会の先生のご意見もお聞きしながら更なる強化対策を実施しているところです。追加補強対策としては、この盛土の横断面の赤い着色部分でございまして、1つは水平ボーリングということで、これは主に水抜きを目的としたボーリングを行っております。13本予定しているうち6本は既に完了しています。続いて抑止杭として鋼管杭を16本打設する予定です。これは今日から打設を開始する予定です。下の方にボーリング機械の設置状況を記載しています。続きまして次のページです。検討委員会は冒頭に申し上げましたように第2回の委員会を9月28日(月)に開催いたしまして、災害原因及び本復旧対策検討、それから調査ボーリング結果の報告、原因分析、本復旧対策工についての検討を行うということでして、第3回委員会は10月の中旬から下旬頃に最終報告発表ということで本復旧対策工、災害原因などの取りまとめと類似盛土個所における対策工についての検討を予定しているところです。以上です。

 


(会長)

復旧にあたりましてはマスコミの皆様をはじめ地元の皆様、本当に多くの方々のご支援をいただきまして、本当にありがとうございました。では次に3つ目の案件ですが、9月の大型連休時期の渋滞予測です。4日に記者発表はさせていただいたのですけども、せっかくの機会でありますので内容について、ご説明させていただきます。
中森部長からお願いします。

 


(中森部長)

保全・サービス事業本部、中森です。よろしくお願いします。お手元に資料をお配りしておりますが、大変厚い資料ですのでクリップを外してご覧ください。全国版と中日本版、それからリーフレットで渋滞予測ガイドの3点資料をお付けしています。本件は9月4日に既に発表させていただいております。会長からお話がありましたように、せっかくの機会ですので1ページ目の資料にてご説明させていただきます。
1つ目ですが、今回は9月の大型連休としまして、9月19日から27日まで9日間を予測しました。2つ目ですが今回はGWの渋滞予測にお盆の混雑状況も加えて予測いたしました。3つ目に、太字で書いてありますように、9月の大型連休はGWと全く同じような曜日の配列、連休数でありましたので、その結果GW並みの渋滞が発生するという予測に至ったわけで、■で2点記載しておりますように、1点目は今まで渋滞が発生していなかった個所、また事故や天候などの影響もあります。
また2点目はご利用いただくお客様に対して渋滞のピークの時間帯をお知らせする広報をいたしまして、お客さまにご利用される時間をずらしていただいたり、最新の道路情報の確認をお願いしています。(2)ですが下り線、上り線に分けまして渋滞10km以上、また30km以上の数値を予測しております。グラフの下に記載してあります10km以上、30km以上の予測ですが、冒頭で申し上げましたようにGW並みの渋滞ということで発表しております。10km以上の渋滞が上り、下り合わせて181回です。下段になりますが、混雑・事故防止対策の取り組みということで、休日特別割引開始後のGWに、お客さまから様々なご意見をいただき改善し、この夏の混雑期にも取り組みを、更に今回の連休に向けてということで、1)上り坂などでの速度低下注意喚起対策、2)トンネル照明の照度アップによる暗がりや圧迫感緩和、3)渋滞末尾への追突注意喚起対策、4)休憩施設などでの駐車場整理員の配置、5)大型車駐車ますの確保、GWに足りないとご指摘を受けました6)特設トイレの設置等々、取り組んで参ったわけでございます。引き続き今週末、9月大型連休に向けて進めて参りたいと思います。手短ですが以上です。ありがとうございました。

 


(会長)

次に紀勢自動車道が開通して半年になりますので状況をご報告いたします。今日15時に名古屋支社から発表させていただくものですが、事前にご説明させていただくものです。半年間振り返ってみますと、3ヵ月経ったところでご報告しましたが大体同じ傾向でございます。大宮大台から紀勢大内山までの一日あたりの平均交通量は5,200台/日、それから並行している国道42号の大内山から工事中の紀伊長島までの間、これも交通量が増えております。それから大宮大台ICの一日あたりの出入交通量が3,500台/日減っておりまして、一方、紀勢大内山の方では出入交通量が5,200台/日となりました。この大内山までの開通によりまして三重県、愛知県、滋賀県、静岡以東からの利用交通量が増えています。整備効果として書いてありますが、高速道路の料金値下げが三重県南部の観光促進に寄与していると言えると思います。それから色々な施設の状況も調べてみますと、入込客がですね相当大幅に増えたところがございまして、地域活性化に寄与しているということが言えると思います。救命救急搬送で紀勢大内山ICを利用するケースが55件ありまして、「命の道」としての機能を果たしていると言えるといえます。2ページ以降に今申し上げました事柄の内訳を付けておりますので、それを後程ご参照いただければと思います。

それから次に、第1回接客コンテストというのを開催することにしました。これは今日の記者発表です。私共が運営しておりますSA・PA、営業施設のスタッフを対象といたしまして、CS、顧客満足の向上を目的に行う接客コンテストです。管内をいくつかの地域に分けまして、まず予選を行いそこから全部で20名の方が本選に進みまして、ロールプレイングと言いますか、お客さまに接する動きを審査いたしまして、最終的に表彰するというものです。本選は10月30日に行うことになっております。10月から予選が始まる計画です。

次にこれも今回記者発表ですけれども、第2回メニューコンテスト、これは昨年もやりまして大変ご好評いただきました。管内のレストラン45店舗で行うコンテストです。今回は、こだわり(厳選)素材を生かしたおすすめの逸品ということで、新作メニューを10月10日からはじめまして、売上状況とか試食審査の結果などから最終的に代表メニューを8品選びまして12月18日に最終選考を行います。

次のテーマが恋人の聖地プロジェクトの展開です。既に私共の管内では北陸道の杉津PAと東名の浜名湖SAが聖地に選ばれたわけですけれども、今度新しく2カ所増えまして、中央道の諏訪湖SAと北陸道の有磯海SAと決まりまして、全部で4カ所となりました。これを機に10月18日に諏訪湖SAでセレモニーをいたします。それから11月から来年3月までウインター・ドライブ・プロモーションということで、私共の恋人の聖地だけではなくて周辺にもいくつもございますので、そこと連携いたしましてこういう企画を進めようと市町村、観光協会をはじめ地元の皆さんと話し合いを始めておりまして、こういうことを通じて地元のお役に立ちたいと考えております。

それから次に環境に関連するテーマですけど3つございます。一つは来年のCOP10に備えて私ども積極的に参加したいと思ってます。名古屋で開かれる大きな国際イベントです。それから2つ目が他社と一緒になって環境についての共同研究を始めましたのでその内容です。もうつが飛騨トンネルの湧水を利用して、水力発電を始めることにしました。その後報告、3件まとめて技術部長の猪熊の方からご説明させていただきます。

 


(猪熊部長)

技術開発部長の猪熊です。よろしくお願いします。今会長の方から紹介がございましたが、環境の取組み3件ということでご説明させていただきます。

まず、COP10に向けた関連イベントへの参加です。ご案内のように来年10月にCOP10が名古屋で開催されます。私どもNEXCO中日本では経営施策として地域連携、環境・持続可能社会化への貢献の推進の取組みの一環として、COP10関連の事業に積極的に参加・支援し、地域・NPO・行政の方との交流を深めることとしております。私共は自然環境に配慮したエコロードづくりをしておりまして、これは生物多様性の保全に貢献しているものであります。その生物多様性に係わる実施状況といったものをパネル展示などで説明するということで、参加を計画しているイベントが3件ございます。「環境デー名古屋2009」、「中経連テクノフェアー2009」、それから「COP10開催1年前記念行事」です。一番下のCOP10の開催1年前記念行事におきましては、パネル展示に加え、私どもが育てております地域性苗木を栽培ポットに植え替えるという体験学習もしていただこうということで計画しております。

次のテーマでございます。環境負荷低減を目的とした共同開発研究の開始です。2点の共同研究を始めることといたしました。1つ目がアスファルト舗装の中温化技術に関する研究です。アスファルトの舗装というのは、施工のときに加熱します。その時にCO2の排出等があるのですがそれを抑制し、それから交通規制時間の短縮といったことを目的に、アスファルト混合物の製造温度を通常のものから下げるということで180度から100度位に下げられないかということを目的としております。そういう共同研究を始めるということで契約を締結いたしました。契約期間はここに記載しておりますように2012年8月までで、東亜道路工業株式会社、株式会社日本道路、株式会社NIPPOの3社と行う予定でございます。当研究はグループ会社である中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京も参加して行うこととしております。

それから2点目の共同研究でございますが、維持管理植物発生材を活用した木質ペレットの製造技術に関する研究です。道路の維持管理作業から植物、枯れ草を主体とした発生材が生じるわけですが、それをペレットにして燃料として使えないか開発を行うものです。これに関しましては木質のペレットはあるのですが、草を主体としたペレットというのは、いま市場性があるのはございませんので、それを開発するとです。契約期間は記載のとおりでして、2社、新興工機株式会社と株式会社御池鐵工所です。

次に飛騨トンネルの湧き水を利用した水力発電の導入についてです。飛騨トンネルは2008年7月に営業を開始いたしましたが、工事を実施している途中から湧き水というものがございました。で、今はその湧き水はトンネル非常用設備などの水源として一部利用している状況でございますが、残った水は近隣の庄川に放流しております。その量が0.7m3/秒ということで、ざっと計算しますと15万人程度の都市の一日の水道使用量と同じ量になります。これを有効利用するということで、水力発電ができないかということを計画いたしました。発電した電力はトンネル照明などへ供給して、CO2の排出量の削減に努めたいと考えています。現在試算しているところによりますと、飛騨トンネルの年間使用電力の約3割程度削減できるのではないかと試算しています。水力発電はNEXCO中日本として初めての取り組みですが、高速道路関連社会貢献協議会の支援によって行うというものです。記載のホームページでいま工事の募集をしているということです。説明は以上です。

 


(会長)

以上で冒頭の説明を終わります。

 


(司会)

それでは、ご質問をお受けしたいと思います。


(記者)

飛騨トンネルの水力発電はいつごろから実際の発電が開始する計画ですか。また、トンネルでの水力発電は中日本高速では初めてでしょうが、全国的に見て珍しいものですか。


(猪熊部長)

中日本としては初めての取り組みです。社会貢献協議会のHPで工事の公募をしていて、締め切りが10月9日です。その後、実際にやっていただく方を決定する手続きがありますが、想定している工期は360日です。


(記者)

ということは、来年の終わりくらいには発電した電力が供給されるということですね。


(猪熊部長)

来年の終わりなり、来年度の終わりには発電した電力で照明が光ることになります。


(記者)

中日本以外ではこういう取り組みは結構あるのでしょうか。


(猪熊部長)

小規模な水力発電はいろいろなところでおこなわれているということは聞いています。


(記者)

それと比べるとこれは大きいのですか。


(猪熊部長)

1番大きいというようなレベルではありませんが、これより小さい発電はあります。


(記者)

照明電力が年間で400万円削減できるということですが、設置費用と比べると何年で元が取れる、というような言い方はできるでしょうか。


(猪熊部長)

私どもの心積りの金額はありますが、いま公募中ですのでその金額を言うのは控えさせていただきます。このような機械は30年程度の減価償却期間です。実際にはオーバーホールとか点検とかをしていくことは当然必要ですが、今の想定ではその期間で十分ペイできるようなものになっています。


(記者)

今週、鳩山新内閣が誕生しましたが、それについての期待や感想をお伺いしたいのと、高速道路無料化というのもいよいよ現実味を帯びてくるかと思いますが、それについてのお考えをお聞かせください。


(会長)

世の中の景気は相変わらず良くないですね。私は新しい政権には、経済対策といいますか、景気対策を講じていただきたいと思っています。
私どもの事業を通じて肌で感じていることは、トラックの交通量が低いことです。これはやはり産業活動が落ちている証拠だと思います。
また、いまは直接関係はありませんけれども、雇用情勢を見ますと、求人倍率とか失業率が本当に悪くなっているわけなので、これは本当に実態経済を反映している指標ではないかと思います。雇用情勢が悪いと個人消費が増えませんから。個人消費と設備投資が景気の牽引力ですけれども、個人消費の比率が6割とか7割とかあるわけですから。雇用情勢が悪いとどうしても財布の紐が固くなりまして、個人消費が増えないということがあると思います。やはり経済政策といいますか、景気対策といいますか、それに力を入れて民間の活力が本当に蘇ってくるように方向付けをしていただけるといいのではないかと期待しています。
それから料金の無料化の問題ですが、これは先月の定例会見の場やいろいろなところで、今までも意見を言ってまいりましたが、これは原則論のところの議論でして、こういう課題がありますよとということを率直に申し上げてきました。これからは各論の段階にはいると思います。新大臣のお考えを直接伺ったわけではありませんけれども、段階実施、要は原則無料化といいますか、一部無料化といいますか、それを段階的に実施していくと。千円割引の取り扱いも社会実験として考えるというようなお話も間接的に聞いておりまして、そうなりますとこれまでの施策というものの評価をしっかりやって、そして次に進むということだと思います。
私どもの民間のセンスでいきますと、PDCAとよく言うのですが、Plan、Do、Check、Actionといいまして、ある施策がおこなわれた場合それをきちっと評価して、その結果に基づいて次の施策を考える。PDCAのプロセスをまわしていくということが、一番現実的な方法ではないかというふうに思っています。
それから、大きな社会的影響を与える施策でございますので、なるべき多くの人の参画する論議の場というのが必要ではないかと思っています。ちょっと古臭いお話を持ち出して甚だ恐縮ですが、明治の始めに「広く会議を興し、万機公論に決すべし」という言葉がありましたが、やはりそのようなことがいつも必要なのではないかと思います。そしてそこに現れたいろいろな意見とか、実績とか、その分析結果というものに基づいて次に進むということが確実な方法なのではないかと思っています。それがいま考えていることです。


(記者)

具体的に各論の話でいくと、渋滞の問題であるとか、完全に無料化すると雇用の問題であるとか出てくると思いますが、それぞれについてどのようにお考えですか。


(会長)

原則論のところは前回の会見で申し上げたので触れなかったのですが、もう一遍繰り返すのとになるのですが、名神ができて44年ですから、有料化の歴史というのは40数年間あるわけですけれども、一貫して有料道路というものが国民の中で支持されてきたと私は思います。そういう歴史の上に立って、どうあるべきかということを考えないといけないのではないかということが1つです。
私も広く管内を回っていますけれども、「料金が高いので何とかして欲しい」という声は随分たくさん聞きました。ですからそういう意味では、自社でできる範囲でETC割引をやって、今度の料金割引は別として、3割近くまで割引をやってきたわけです。それは自力で歯を食いしばってやるべきだと。地元の方々やいろいろな業界の皆さんの熱い要望に応える必要があると思ってやってきたわけです。去年から政府の割引もいろいろとおこなわれてきました。そういう声がある一方、完全無料化にして欲しいという声はあまり聞こえてこないのです。ということが1つあります。
それから財源の問題は広く論議されていますから、それはそれできちっと詰めなければいけません。仮に財源が解決したとしても、公平性の問題というのが残ります。つまり、道路は道路を使う人が負担すべきでないかと思います。特にでき上がっている道路は傷むわけですが、それは使う人が負担すべきではないかという受益者負担の原則というものはきちっと論議しなければいけません。お金の問題ではなくて、むしろモラルの問題だと思います。そこはしっかり論議して、皆で新しいコンセンサスができればそれも1つの解決方法だと思います。
それから混雑・渋滞ですね。これは5月の連休とかお盆で証明されたわけです。明日からの大型連休でどうなるかというのも注目したいと思います。これが無料化になればもっと進むのではないかという推測ができるわけです。そこはやはり事実に基づいて評価をする必要があるだろうと思います。
当然、高速道路というのは、一般道に比べると炭酸ガスの排出量が少なくて環境に非常にいいんです。これがぎっしり渋滞いたしますとその効果が薄らいでいくという問題があります。
それから最近私どもが新聞を通じて勉強しているのですが、いろいろな各業界の皆さんの意見もあるようですし、他の交通機関との関係とかそういったものも検証する必要があるのではないかと思います。
それとやはり直接的に言うと、料金収受員の雇用ですね。NEXCO3社で直接作業にあたっている方々が1万6~7千人でしょうか。バックアップ部隊も入れてざっと2万人なんです。特に直接作業に従事しておられる方々は、60歳前後の方々でありまして、再就職の非常に難しい世代です。今のように失業率の非常に高い時はなおさらのことだと思います。一方、NEXCO各社が吸収能力があるかといいますと、それは正直言って極めて薄いと思います。結局多くの方々が失業者になる可能性が非常に高いわけでありますから、その再就職を考えないといけないという問題があります。冒頭、雇用の問題に触れましたけれども、2万人といえば国全体からいえば僅かかもしれませんが、それぞれのご家族や会社にとって見ますとものすごく大きな問題です。是非、多くの人々に知っていただきたいし、どうしたらいいかということも一緒に相談していただけるとありがたいと思います。
また原則論に戻ってしまいましたが、その原則論は多くの方々にテーマとしてご理解いただいているというふうに思っておます。そこまで全部確信を持っているわけではありませんが、今後もいろいろな場面においてそうした大事な課題について取り上げられていくということを望んでいます。


(記者)

各論では会長が今おっしゃられたように問題があるのかなと思いますが、その上で先ほどおっしゃられた広く意見を聞いてということですけれども、会長としてどうすべきだとお考えでしょうか。


(会長)

やはり中立的な議論の場というものがあっていいのではないかと思います。そこに多くの人が招かれて、委員になるという形もあるでしょうし、招かれて話をするということだと思います。まだ具体的にどういう方法がいいのかというところまでは固めておりませんけれども、是非そういう観点で、どういう仕組みがいいのかというのを決めていったらいいのではないでしょうか。


(記者)

場合によっては広く意見を聞き入れた上での完全無料化ということであれば、受け入れも可能だということですか。


(会長)

つまり、新しい国民合意がそこで生まれるということであれば、これは民主主義の国ですからそういう方向にいくと思います。ですけれども民主党のマニフェストにも書かれていますが、完全無料化と言っているわけではないのですよね。原則無料化、逆の言い方をすれば一部無料化。それを段階的にどうやってやるか、社会実験をしながら決めていくというのですから、これはある意味で現実的な道を歩もうとしているのかなという気もしておりまして、何かかけ離れた議論の場になるという気はしておりません。


(記者)

先ほど国民的合意ということで、8月の末の会見でも国民的な合意が必要ではないかとご意見を言われていたと思いますが、総選挙という選挙権を持つ国民1人1人の意志を出せる中において、無料化を掲げた民主党が勝ったということは1つの国民合意と言えるのではないかという考え方もあると思います。その点に関してどういうふうにお考えですか。


(会長)

自分自身の投票行動を考えても、非常に詳しいテーマとそうでないテーマがありまして、このテーマについてはどうかなと思っても、このテーマについて良ければ、それで賛成しようとか、投票には随分いろいろな動機があるのではないでしょうか。ですから総意としては民主党の方針というものは支持されたということは間違いないわけです。全体としてはですね。その中身1つ1つを見ていったときには、賛否両論があるというふうに考えるのが現実的なのではないでしょうか。それをきちっと論議し、判断する場が必要だというふうに私は思っています。


(記者)

無料化の声はあまり聞いていないということでしたが、実際に千円割引というのが始まりまして、トラックの事業者さんとか、そういう運輸業さんからNEXCO中日本のほうに有料化を政府のほうに伝えてくれという、元に戻してくれという声というのは実際にあるのですか。


(会長)

そういうのは特に無いですね。
なんとか安くして欲しいというのがずっとありまして、民主党が無料化と言い出して、新しい状況が生まれたわけですけれども、私どもが直接接しておりますいろいろなお客さま方の意見の中では、安くして欲しいとう声はありますが、無料化ということをはっきり言われた方は私自身は聞いていません。


(記者)

先ほど安くしてくれという声を聞いたことがあるということですけれども、例えば現状に民営会社の形で安くする余地というのはあり得るのでしょうか。


(会長)

私どもが前からやっていた時間帯割引というのがございますよね。それから大口多頻度割引。これは何としてでも自力でやろうと思って頑張ってきました。ETCの普及率が高まれば高まるほどその負担は増えるわけです。新しい料金割引が入る前で、大体28~29%くらいまでいっていたかも知れません。でもこれは今後普及率が増えても頑張ろうと思っていました。大雑把に言うと3割ですよね。3割分の割引は頑張ろうと思っていました。それを越える分は会社はもたないと私は判断しております。経済対策で前の政府が決めたわけですが、千円割引ですとか、新しい割引を3月の末から始めました。これはですから私自身としては歓迎したわけです。会社の自力ではできないことそれを国がやってくれるというのであれば、それはお客さまにとっていいことだというふうに考えました。それで今日まできたわけでありまして、いまご質問のどこまで負担できるかということになると、3割程度が限界ではないかと、私は経営者としてそのように思っています。


(記者)

先ほどのご主張のようなことをNEXCO3社の皆さんとか、他の交通機関の経営の方も訴えているようですけれども、そういう訴えを今後どういうような方法で国交省なりに伝えていくという具体的なスケジュールとかやり方を考えているというようなことはあるでしょうか。


(会長)

まだそこまで具体的な方法までは決めておりません。おそらく各業界の皆さんがそういう主張を持ってそれぞれに活動されるのではないかと思います。私どもも今後NEXCO3社もそうですし、道路会社としてどういうふうな方向がいいのかということは相談しながら進んでいきたいと思っています。


(記者)

鳩山政権で補正予算執行停止の話しをしていると思いますが、NEXCO中日本管内に合併施行の区間がいくつかあると思いますが、その取り扱いや考え方を教えてください。


(会長)

これは、大変大きな影響力のある課題ですが、新政権の方針が決まるのを待つことになります。当然その過程では、地元の皆様の考えとかいろんな人の意見を聞かれて、決めていかれることたど思います。当社であれば、4車線の区間などがありますので、方針が決まればそれに従うことになると思います。かなり進んできていますが実際に発注行為に入っていないもなどいろいろなケースがありますので、どのような方向に行こうとしているのかを待っているところです。


(記者)

それは、政権の意向がはっきりするまで作業を止めるということなのか。それとも、前政権から引き継いでいると思いますが、そのまま意向がでてくるまでは淡々と作業を進めるということなのですか。


(会長)

合併施行の場合は、大方が国の予算ですから、それの影響は非常に大きいと思います。当社が独自にできるものでも財源的な裏づけがはっきりしていない場合には、しばらく様子を見なければならないと思います。でも、それはそれとして準備は進めるということで、地元とか地方自治体をはじめとして、関係者の皆様と相談しながら準備を進めております。仮に財源があったとしても準備途中のものありますので直ぐにとはいかないのですが、たとえば、東海北陸の4車線化については、前からご説明しているとおりですが、私どもの希望としては、何とか年度内に発注をしたいと思っています。鋭意準備しておりますが、財源がご承知のとおりのものであり、それがもし無くなってしまいますと動けないわけです。そういった制約がわかった上で準備を進めているといった状況です。


(記者)

今日の朝日新聞に東海北陸自動車道の4車線化工事について、岐阜県内の建設会社に7月の特例で地元優先入札を行うと載っていたのですが、先ほどの会長のお話をお聞きすると、様子を見守るということでしたが、これはどういうことなのか。


(会長)

まだ、発注しておりませんので、どのような方針で発注しようかということは、以前、6月の定例会見かでご説明をさせていただきました。
大前提は、競争入札です。競争条件ということがまず第一です。その上で経済対策として行われたものですから、中小企業、地域企業に対する配慮をする必要があると考えて、小さな工事が発生した場合には、(11億円以下)地域要件を付けようとしています。でも、競争条件が無い地域要件はありえないわけです。そのようなところをわかった上で進めていこうと思っています。


(記者)

今のところは、地元優先入札を行うのかわからないということですか。


(会長)

今まで我々もたくさんの仕事を発注してきました。そのデータはしっかりできており、例えば、ある発注要件が出てきた場合、それに応募できるであろうとういう会社はたくさんあるわけです。岐阜県の中に本社があるという会社もたくさんあるわけです。その中の何社かが応募してくれるということであれば、それで競争条件ができると思います。その上にたってやってみるということです。


(記者)

とりあえず、岐阜県の中で絞りたいということですか。


(会長)

11億円未満の工事で、入札参加の機会を増やしたいということで、前に発表したような取り扱いにしたわけです。実際には、まだぜんぜん動いてないわけです。これからですが、なんとか年度内発注ができればいいなと思っています。実際に今いろいろと調査をしたり、計画を作っているところでなので、どのような単位の発注ができるようになるかは、これからですから、その上でということになります。大きい案件もあれば小さい案件もあるということです。


(記者)

国交省発信の地元優先を引き継ぎながらということですか。それとも見直しはせずにということですか。


(会長)

見直しというか、会社の方針として決めたわけです。それを、今変更するつもりはありません。


(記者)

会社の方針として、地域の貢献というものを1つの柱としていることは、理解していますが、どうして、この方法で地域貢献を図らなければいけなかったのかを教えてください。経済対策という意味合いであれば岐阜県のための経済対策では無い訳で、その点でご意見を伺いたいのですが。


(会長)

該当する4車線化の工事の区間はすべて岐阜県の中なのです。そういう意味で地域特性を生かすという地域要件を考えました。資材の調達であるとか、例えば進入路をどういうふうにするかとか、自治体との交渉とかは、相当な経験とノウハウがいるのです。岐阜県の中だけの工事ですからそういうことにしようかと思ったのです。私どもの管轄外の地域ではどのようにしているかはわかりませんが、東海北陸道のこれからやろうとしている4車線化の区間は、そういう位置付けなので。大きな工事であれば地域要件を付けていないのでそれはそれでいいわけです。やはり、中小企業への配慮、地元企業の配慮というのは、一定程度必要なのではないかと。経済政策というものの意義からして私どもが判断したわけです。


(記者)

合併施行区間の取り扱いは、国交省側からどうするべきだということが会社のほうにはきているのでしょうか。


(会長)

特にそれは無いです。今後仕事の分担をどうするかということを細かく決める必要はありますが。東海北陸道の4車線化であれば、890億円でその内当社として負担できる額として85億円です。そこまでは決まっていますが、細かいことはこれから決めなければいけません。


(記者)

前原大臣が、高速道路無料化は、わりと時間を掛けてやっていくということで、いろいろな意見を聞いてやっていくのかなとの印象を受けますが、前原大臣の発言や姿勢に対してどういうふうにお考えでしょうか。


(会長)

先ほども触れましたが、ステップ・バイ・ステップで行くという考え方を述べられたと思いますので、つまりそれは何を意味するかというと、多くの人の意見も聞き、実際やってきたことの効果を検証するというプロセスが入るわけです。我々は民間企業の人間ですからすぐそう考えてしまうのですが、PDCAのプロセスをまわしていくことならばいいなと理解しております。直接お話を伺っていませんので、それ以上私がとやかく言うわけにもいきませんが、チラッと伝えられているところからいろいろ推測をしている段階です。


(記者)

いまのに関連して、元々を辿れば民主党の高速道路原則無料化というのは、政策的、戦術的かもしれませんけれども、どういうところに狙いがあるのだろうと会長ご自身は推測されますか。


(会長)

何ともお答えのしようがないご質問だと思いますね。そういう考え方もあるのかと最初に思って、私どもは実業の世界の人間ですから、あるテーマが出されたらそれにどういう課題があるだろうかとピーンと分かるわけです。毎日現場を見てますからね。それで私は皆さんから問われるたびにその思いを語ってきたということでございまして、なるほど一方に割引のない完全有料制が、一方に全部無料という両極端があるわけですよね。その間に色々な意見があって、最初は全部無料化なんて聞いてビックリしたんですけど、段々お話を聞いているとそうではないらしいということですよね、マニフェストを見ましてもですね。こっちの完全有料化も、完全償却するという意味の有料化から、段々今は世の中の声を聞いて現実には何割かの割引をするようになってきているわけですよね。そういう全体像を見ると両極端というのは今は存在していない、間の中で色々な選択肢が生まれようとしているということだと思うのです。私の感想はそんなところで、あまりご質問の趣旨に答えたかどうか分かりませんがそう思います。


(記者)

もう少し大きな話でですね、民主党が公共事業の見直しあるいは削減を窺ってますけれども、その辺りの見直し作業が事業に与える影響とか、どういうことをお考えでしょうか。


(会長)

それは進行段階にもよると思うんですね。相当進んでいるものは影響が大きくて、まだこれからというところは期待が失われるという影響はありますけれども、それは進行段階によって大分違うのではないでしょうかね。ですからそれは一律に評価は難しいのではないかと私は推測しますので、これからそういうステップを踏んでいくのではないのでしょうか。私自身の極めて常識的なものの考え方しかいたしませんので、その人間の推測ですから、そうなるか全く分かりませんけれども。


(司会)

よろしいでしょうか。その他に如何でしょうか。それでは本日はこれで終わりといたします。ありがとうございました。