NEXCO 中日本 中日本高速道路株式会社




2006年06月27日新旧会長共同記者会見

会見要旨

(司会)

ただいまから中日本高速道路株式会社の新役員と本日付で退任いたします、近藤前会長の記者会見を始めさせていただきます。
まず、本日の第1回定時株主総会で、取締役及び監査役が選任され、その後の取締役会及び監査役会で代表取締役と役付き取締役、常勤監査役が選任されました。
代表取締役会長に選任されました矢野弘典から新役員を紹介させて頂き、引き続きご挨拶申し上げます。

 

(会長)

どうもみなさんはじめまして、矢野でございます。よろしくお願いいたします。
それでは早速、本日の取締役会で中日本高速道路株式会社の役員に選任された者をご紹介させていただきたいと思います。
本日は当社の第1回定時株主総会でして、取締役及び監査役が選任され、その後の取締役会、監査役会でお手元の資料のとおり、中日本高速道路株式会社の代表取締役、役付取締役及び常勤監査役が選任されましたので紹介します。
まず私、矢野弘典ですが、代表取締役会長に就任しました。よろしくお願いします。
代表取締役社長には、高橋文雄(たかはしふみお)。
専務取締役には、山本正明(やまもとまさあき)。
常務取締役には、別府正之助(べっぷしょうのすけ)。
常務取締役には、原田裕(はらだゆたか)。
常勤監査役として、高橋達治(たかはしたつじ)。
新任の常勤監査役として、西山巍(にしやまたかし)です。
なお、本日は所要があり会見には同席致しておりませんが、非常勤監査役として、川口文夫(かわぐちふみお)と石塚博司(いしづかひろし)の2名が引き続き選任されました。
また、近藤前会長には先ほどの取締役会で相談役を委嘱することとしましたので、ご報告します。今後ともよろしくお願い申し上げます。
それでは私から簡単にごあいさつを申し上げさせていただきます。
先ほどの社員へのあいさつの際にもご同席された方もいらっしゃるかと思いますが、多少重複する点はお許しください。
現在の私どもネクスコ中日本の課題は何か――。一口で申し上げますと、民営化のスキーム、事業計画はすでに出来上がっていますので、これからは実行あるのみだと考えています。
その場合、これは民間の手法として広く用いられている考え方である、「PDCA」のサイクルを回して、計画の中身をよりよくし、成果につなげていくことに努めてまいります。PLAN-DO-CHECK-ACTION、このサイクルを回すこと、これによって初期の目的が具体化していくものである、と考えています。
そのためにも、お客様を第一として、衆知を集め、現場主義に徹し、変革をたゆまずに進めていくことが必要である、と考えています。
あらためて申し上げるまでもありませんが、高速道路事業は公共性の非常に高い事業です。私は「企業は社会の公器である」と考えていまして、当社の事業はとりわけその意味合いが強いと思います。
それだけに、積極的に情報を開示し、透明性を高めていくということは当然の努めです。また、国民の信頼を回復することなしに事業の将来の発展はありえません。
「コンプライアンス」ということがよく言われます。これは「法令遵守」のことですが、「法令遵守」は企業市民としての当然の義務で、それだけでは不十分です。これからは早くその域を卒業して、積極的に社会的責任を果たし、本当の意味で世の中に、真に役に立つ存在になる必要があります。
わたくし自身まことに微力ですが、近藤前会長が確立された事業計画に基づき、みんなで力をあわせてその実現に取り組んでまいります。もちろん状況は刻々と変わっていきますので、柔軟な対応を常に心がけながら、この民営化の目的を常に忘れることなく、実現していきます。
役員、幹部社員、前線の社員、みんな一体となって取り組んでまいる所存です。皆さま方におかれましても、ご支援とご理解を賜れば大変ありがたく存じます。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(司会)

では、引き続きまして前会長、近藤からご挨拶をさせていただきます。

 

(相談役)

どうもみなさん、こんにちは。
さきほどから話をしていますように、先ほどの株主総会をもちまして、会長職から退任しました。
また、先ほど矢野会長から、「引き継ぎの意味で、また当面どういうことがあるか分からないので、しばらくは相談役として社に席をおいて欲しい」という要請がございました。前回記者会見で「将来のことについては何も決めていない」と申しましたが、まさに何もなかったので、「しばらくの間、お役に立つのであれば」と思い、喜んでお引き受けしました。
ただこれはあくまでも「しばらくの間である」ということを申し添えておきます。
これからしっかりと矢野新会長に引き継ぎをさせていただきますが、新会長が「もういいよ」と言われる前に、私自身で身を引きたいと考えています。なかなか難しいところですが、とりあえず今月、来月にかけてしっかりと引き継ぎがあります。これはしっかりとやらせていただきます。
皆さま方には着任以来――昨年の10月以来、9月末の設立総会以来――毎月お付き合いいただきました。本当にありがとうございました。
私は3年前の11月、公団に着任しました。それ以来、報道関係の皆さま方は、私どもにとってかけがいのないコミュニケーションのパートナーであると、勝手に考えてきました。
そういうことで、ときには無理を言い、夜遅く来ていただいたこともありました。連日会見をお願いしたこともありました。ご無理を申し上げたこともございますが、しかし私自身は、かけがいのないコミュニケーションのパートナーであると考え、お付き合いをお願いしました。
当地でも10月以来、もう9カ月になりますが、本当にお世話になりました、ありがとうございました。
ご承知のとおり我々の会社の真の株主は、国民の皆さま方です。私どもの考えていること、やっていること、これからやろうとしていることを、できるだけ真の株主たる国民の皆さま方に理解していただくことが最も重要なことだと思っています。
我々としてもホームページをできるだけ拡充するとか、前回の記者会見でも話をしましたが、専任の情報開示担当者を設置するとか、いろいろ努力はしてまいりました。これからも矢野会長から話があったように、情報開示の重要性は、役員・社員全員が認識していますので、引き続きさらなる工夫をしていただけるものと信じています。
本当に今まで、ご指導、ご鞭撻をいただきましたことをありがたく思っております。私に賜りましたご厚誼を、ぜひ新会長にも賜りますことを、改めてお願い申し上げます。
そして私の退任にあたっての思いは、先ほどの社員へのあいさつで聞いていただいたと思います。
あえて付け加えさせていただくとすれば、1つは3年前に公団に着任して以来、やるべきことを基本的には妥協しないでやることができた一種の達成感があります。もうひとつは、私の後任に矢野さんという立派な新会長を迎えて去ることができる、その幸せ、その2つを申し上げて私の退任に際しての感想とさせていただきます。
ありがとうございました。

 

(司会)

それでは質疑応答に移らせていただきたいと思います。本日の会見終了時刻は16:20を予定させていただいておりますので、ご協力をお願いいたします。ではご質問はございますでしょうか。

 

(記者)

近藤さんに伺います。公団の総裁になられていろいろと民営化への道筋を付けられたかと思います。当初は上下一体方式での経営など、民営化に向けた見地を述べられていたかと思いますが、最終的にはリース方式となったり、民営化に際しても国が3分の1、株を持つというような形で完全なる民営化というところまではいかない形となりました。
それについてのご所感をいただきたいのですが。

 

(相談役)

非常に核心を突くご質問で、しっかりとお答えしなければならないと思います。
最初にお話のあった上下一体ですが、上下一体といってもいろいろな形があります。私が1番重視したのが、会社の自主性ということです。私は民営化法案策定にあたって、このことだけはこだわったんですよ。ですからリース方式になっても、基本的には所有していることと何ら変わらない自主性はいただきたい、そうこだわりました。
それは法制上いろいろな条件がありますよ。条件はありますが、その基本的な自主性は十分に確保し得たと、そのように考えています。形式的には保有機構が所有する、新会社がリースしてそれを運営する。しかし運営主体が補修・保全をはじめ自主的にそれを行う。
機構というのは単に計算上の役割を果たす。法律上そうなっているわけですよ。実際にその道路をどのように補修をするのか、あるいはデザインの変更をする場合にはどうしたらいいのか、どうするのか。これらは新会社が全て責任を持つ形になっている。
ですから形式上は上下分離されたような形ではあるが、実体としては限りなく上下一体に近い自主性は確保された。
これまでに税務上の問題とかいろいろなことがあったわけです。私もいろいろ考えました。国土交通省の方もいろいろ考えた、党の方でも考えていただいた。やっぱりこれが一番いいだろう。自主性を最大限尊重しながら、税金やその他のマイナスの制約からはできるだけ束縛されない形にしておく。いい法案ができたなと、そう思っているんです。
それから3分の1の話、これは重要なんです。
これは総理のお考えで将来は上場ということを言っているんです。われわれも上場を目指すべきだと思っています。
上場実現までにはいろいろとやらなければいけないことがあります。またいろいろとクリアしなければいけない条件があります。しかしそういうことを乗り越えて、将来は上場していこう、完全民営化を果たしていこう。これは政府の意志です。総理をはじめとする政治の意志でもあったわけです。
はじめはいろいろな案がありました。法案の2次稿、3次稿あたりで2分の1政府保有、という条項があったんです。しかし将来の完全民営化をわれわれとして目指すのであれば、考え方として過半数をいつまでも国にというのはまずいのではないか。とりあえず3分の1ということにしようじゃないかとなったわけです。
これは上場の時に、ある意味法律を見直さなければならないんでしょうね。ですから法律には10年以内に見直しましょうという附則が付いているんですよ。そういう意味で当面3分の1です。
これから資金の自主調達もやらなければならない。私は法案作成、法案審議の過程で、金融関係の方のお話もずいぶん伺いました。やはりはじめのうちは上場の準備が整うまで、また財務構成がきちっと確立するまでは、政府がある程度の責任を持って、過半数ではなく3分の1の大株主として株を所有していくんだという裏付けがあった方が、金融市場は安心する、そういうお話も聞きました。
したがって現実的には、100%政府出資でスタートするんです、上場まではね。そして10年以内に法律の見直しをやるんです。そういう前提の下での3分の1だし、自主性の確立なんです。
これでほぼ当初われわれが目標とした、自主性のある会社経営を通じての民営化、その目的は達成できたのではないかな、そう判断したということです。
これは法案審議の過程でも当時、メディアの皆さんからご質問がありまして、私は今のような形で答えさせていただきました。大変重要な質問でしたので改めて答えさせていただきました。

 

(記者)

しつこいようですが、上場に際しては3分の1の政府保有について見直しの必要がある、というような前会長としてのお考えがあるというとらえ方でよろしいのでしょうか。

 

(相談役)

ごめんなさい。そうではなく、3分の1があっても上場には差し支えありません。やはり過半数はまずいでしょうね。ですから3分の1は政府が保有するということで上場はできます。
しかし将来的には総理もおっしゃっているんですよ、完全民営化をやると。

 

(記者)

附則が付いている点、10年以内に3分の1をもう一度見直しをするべきだ、ということではないのですか。

 

(相談役)

いえ、必ずしもそうではないです。10年以内に見直しをするということになっていますので、その時にやはりこの3分の1というのはね、その時点で改めてもう1回議論される事項の1つではあるんだろうと、そう認識をしているということです。

 

(記者)

時期として明確にこのくらいだろうというのはお持ちではないですか。

 

(相談役)

これはわかりません。10年以内というように、法律ではそうなっています。

 

(記者)

リースについてですが、通常の民間のリースですと当然減価償却を計上したりできると思うのですが、メンテナンス費用をリースしている側が持つこと自体、通常のリースとはちょっと意味合いが違ってくると思います。先ほど税法上の問題とおっしゃったのですが、その点についてはいかがでしょうか。

 

(相談役)

そのとおりです。普通のリース契約とはまったく違います。
あたかも所有しているがごとく、しかし所有権は機構にある――。そういう特別な法律に基づき協定を結んでいます。

 

(記者)

それは民間会社としてあるべき姿であるとお考えでしょうか。

 

(相談役)

そのように設計をして法案にしたわけです。最大限自主性を確保する形にした結果が、いまの法律です。そのようにご認識ください。

 

(記者)

いまのお話で税法上有利だということは分かりますが、納得できないのは、税金を払わないで民間会社と言っていいのかということです。その点はどう思われていますか。

 

(相談役)

固定資産税のお話だと思いますが、ご承知のとおりいまの枠組みでは、所有権が機構ですので国の財産です。国の財産に国が税金を払うことは固定資産税の基本的な思想ではありません。
また、45年後に完全償還が終わった後には、(資産は)国に帰属することになっています。国の資産に対して国が固定資産税を払うということは税体系の思想には無いわけですから、固定資産税を払わないからといって特別不都合だということではないと思います。基本的には国民の財産ということです。

 

(記者)

国民の財産が主たる会社の資産であるという状況で、本当に自主性を会社と国が無関係ということができるのでしょうか。

 

(相談役)

それがいろいろと議論のあったところです。
国民の財産というところは崩さない。それで会社としての道路保全サービス事業のあり方において、最大限自主性を発揮する方法は無いのか。そういうことで政府も与党もいろいろな議論をしました。いろいろなアイディアが出たことはご存知のとおりです。
その中で、ひとつは国民の財産であることは崩さない。高速道路に土地を提供された地権者の方々は、一民間企業の所有物として提供したのではなく、国民の財産になるからと提供していただいたわけです。
その精神は変えず、道路の保全・補修は運営をする民間会社が、これを修繕する。管理をこうしたい、舗装をこうしたいと自主性を最大限に発揮をする。いちいち国に申請をして許可を得るようなことはやめよう。最大限民間企業としての自主性を確保する。
この2つのテーゼをどう達成するかをいろいろ考えた結果が、いまの非常に特殊な形のリース契約です。民間のリース契約とは違います。そういう結論となりました。
そういうことでご理解頂けますでしょうか。

 

(記者)

相談役としてはどのような関わり方をされますか。また、期間をどのくらいみているのでしょうか。

 

(相談役)

先ほどお話させて頂いたかと思いますが、当面はいろいろな引き継ぎがあります。公団時代からのいろいろな経緯等もお話をし、また、いろいろなケースで、いろいろなことをお伝えしていかなければならないと思っています。
また、どういうことがあるか分かりませんので、そういう時に今までの経験を基にして、何かアドバイスをできるかも知れません。
そういう意味で、お役に立てるのであればお役に立ちたい。これが相談役としての役割だと私は承知しております。
期間は先ほど申し上げたとおり、会長が「もう辞めてもいいよ」と言われる前に私自身引きたいと思っています。それがいつになるか。できるだけ早い方がいいと思っています。

 

(記者)

近藤前会長にお伺いしたいのですが、前回あるいは前々回の会見で、辞任の理由は、「大臣の言われるとおりだ」とか「まだ内定段階なので、はっきり言えません」というような形だったと思いますので、あらためて辞任の経緯、理由をお伺いしたいのですが。

 

(相談役)

理由は今まで申し上げてきたとおりです。「正式に決まってから申し上げます」とは、私は言っていません。「感想はその時に申し上げます」と言いました。
感想はいま申し上げたとおりですが、辞任の理由は、始めからそういうことで私は引き受けました。
3年前は、小泉総理と石原大臣から「公団総裁を民営化まで」と、そういうお話でした。その後、民営化のスケジュールが固まって、平成17年度内に民営化となりました。
民営化法案が成立をした後、具体的に3社が分割して、会社の制度設計をする時に、会社として一段落するまでと、そういう約束で会長職をお受けしました。そういう経緯がありました。これは私なりに、そして任命権者もそのようにご理解されていたと信じています。
一段落するまでということは、法律上の準備期間である本協定ができるまで、そして新しい会社の事業計画ができるまでだろうと考えていました。従ってそれはほぼ達成できたと考えておりますので、このたび辞任をさせていただくということです。大臣もそのような趣旨で言っていただいていたと思っていますし、私もそういうつもりで、前回お答えしました。

 

(記者)

矢野新会長にお伺いします。道路については多く接点が無かったとお聞きしていますが、具体的にご自身のどのような経歴を中日本高速に生かしていきたいか、貢献していきたいか。
それから、近藤会長は、会長としてスポークスマン的に目立った形でやってこられたかと思いますが、会長と社長の位置付をご自身どのようにされていきたいですか。

 

(会長)

東芝におりました時は、現場に近いところでずっと仕事をしておりました。日本だけでなく外国でもいろいろな仕事に携わってきました。そういうものを通じてマネージメントでは何が大事なのかということをいろいろと学んだつもりです。
特に強調しておきたいのは、現場でものを考えるということです。もちろん会社の方針は本社で、頭で考えるという部分はどうしても必要です。しかし、現場で考えるというものがありませんと実行はできません。
しかも、多くの人の協力を得るためには、なおそれが必要だと思います。
1人でやる仕事には限界があると思います。非常に優れた社員がいっぱいいますから、その人たちの能力を十分に、存分に発揮していただくように、私自身も現場に出向いて、いろいろと意見を聞きたいと思っています。
それから、道路公団が民営化したということによって、中ではかなり戸惑いというものがあるのだろうと思います。正直なところそうだろうと思います。公団と株式会社というのは、形だけでなく中身も随分違うと思いますし、これからますます違いが大きくなっていくと思います。民間会社というのはどういうことであろうと、株式会社である以上、経営を誤ったら立ち行かなくなります。
つまり、そういう厳しさというものが常にあって、それをどう乗り切っていくかというのが民間会社の努めだと思っています。そういったところでお役に立てるのではないだろうかと思っています。
結局、技術とかいろいろな専門的な分野のこと、特に道路関係のことについては、私は素人でございます。いま一生懸命皆さんからレクを受けていますが、なかなかまだ十分それをこなしていると思っておりません。
それは努力していきたいと思っていますが、私は民間企業の経営に取って一番大事なのは、「人」だと思っています。その「人」が、本当に能力を発揮してやる気を出せば必ずいい結果に結び付くと思います。いまは「人」を従業員だけについて言いましたが、お客様も「人」、取引先も「人」です。そういう関係の中で、立派な存在感のある会社にしたいというふうに考えています。
近藤さんは公団の民営化というプロセスで1番苦労された方だと思います。そういう中で、先頭に立って事業計画作りにまい進されました。これはどれほど外に知られているかは分かりませんが、土日返上で、本当に一生懸命やって作り上げたもので、計画そのものが衆知を集めたものです。実行するのも衆知を集めてやらなければならない。そうすることによって、計画そのものも、あるいは実行の過程の中で、つまり先ほどの「PDCA」サイクルの中で、少しずつ変わっていくかも知れません。大きな計画の変更があれば、それは然るべき相手とも話し合わなければなりません。が、それでなくとも小さな変更はどんどん生じるわけです。そうしたことによって初めて単なる骨組みが肉付きの良いものになっていくと思います。そういう仕事をしてみたいと思います。
当面はそういうことで、全力投球であたってみたいと思います。

 

(記者)

近藤さんにあらためてお伺いします。会長に就任されてから、この仕事を成し遂げたと胸を張れること、こういう仕事を遣り残したと何か思われていることがあればおねがいします。また新しい会長にどういうことを求めていかれたいかということもお願いします。
次に新会長に、先ほど「PDCA」のお話がありましたが、この会社においてはどういう形でそれを当てはめていけるのかを具体的にお話し願います。

 

(相談役)

私からお答えします。
まず昨年の10月以降今日まで、どういうことを達成し得たかというご質問です。
まず1つが先ほどお話しましたように、法律でやらなければいけないと決まっていることが2つありました。
1つが本協定の締結です。要するにこれから45年の返済の枠組みの中で、どれだけ高速道路を有料方式で新会社として取り組んでいくのか。具体的にそれはどこの路線なのか。その道路の補修、保全・サービスをどういうスケジュールで、どういうことをやっていくのかです。
特にわれわれの域内の高速道路は古くからの路線が多いんです。名神・東名・中央、これは日本、あるいは世界といってもいいかもしれませんが、高速道路史上例がない、これから改築が必要な、あるいは大幅改修が必要な時期が来るのです。今まで世界の歴史上無いような保全・サービスが必要になるんです。それをこれから45年間にわたってどういうふうにやろうか、これは全社をあげて検討しました。総力をあげて検討をして、新しい路線をここまでやろう、保全・サービスはこういう方針でここまでやろうと。例えばチャレンジⅤでも宣言していますが、耐震補強は5年以内に全てやってしまおう、というようなことを決めたわけです。
そうした中で本協定を締結しました。これはいい協定だったと思います。みんなの力です。現場の意見もみんな聞いて、先ほどの矢野さんの話ではありませんが、休日も現場のみんなの意見を聞きました。そうやって、われわれとしてはかなり立派な本協定ができたなと、それが1つです。
もうひとつ法律で決められていることは事業計画です。われわれは事業計画を敷衍(ふえん)して5カ年計画をつくりました。これからの5カ年間で5年後、3年後、それから今年度末までに達成すべき目標、そのためにだれがどういうことをやるのか、具体的に決めました。「チャレンジⅤ」、その要旨はホームページでご覧いただけるようにしていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
したがってこれから5年間でどこの道路がどれだけ、どこまで進捗するのか分かるようになっています。
それから公団時代からのやり残しについてです。談合等不正防止策24項目。皆さんからかなり思い切った意見を出していただいて、今の法体系の中でできるギリギリのところまでの防止策を決めました。それを着実に実行している。
それから新人事制度ですね。今までは行政の人事制度だったのですが、これを民間企業としての人事制度、目標管理計画あるいは考課制度等を順次取り入れていくという人事制度を4月1日から実行に移しています。
したがって基本的に公団という行政の機関から民間企業としての管理会計の世界に、人事制度も含めて移行できる枠組みはもう完成したのです。そういうことで、民間企業として揃えなければいけない制度、枠組みができました。
あとはその上に乗っていかに総力をあげてやっていくのか。そこで、質問の3つ目、課題は何かということですね。
課題はご質問の新会長への引き継ぎにも直結する話です。2つあります。これはこの前少し申し上げましたかね。
1つは枠組み、経営計画ができているのです。これを全員で成し遂げていかなければなりません。そのための総合力の発揮ですよ。
もう少し具体的に言います。公団時代ご承知のとおり事務系・技術系2つのラインがありました。今はもう融合していますよ。これをさらに確実なものにしていかなければならない。
それから新会社になって、今まで財団がやっていたサービスエリア等の営業要員二百数十名を受け入れました。また民間からも新卒も含めて数十名新規採用しています。また役員にも、ご紹介ありましたように常勤監査役として新しく来ていただいて、そういった新しく来た人材と公団から来た人材の融合ということもあるでしょう。
それからもう1つはわれわれの会社の2本柱ですよ。この前お話したように、1つは高速道路事業です。それともうひとつが関連事業です。
サービスエリア等の営業を含めてこれからいろいろなことを展開していきます。インターチェンジ周辺の開発も含めて、いろいろなことを視野に入れて今検討している。この2つが柱です。
この両部門が一体となって相乗効果をあげていかなければいけない。関連事業と言っても、カード事業も含めて高速道路事業と一体となってやらなければ効果は出ないですよ。
そういう意味で事業本部間の融合ということもあるでしょう。そういう意味での総合力の発揮です。それが課題ですね。
そしてそれを実現する前提として、前回もお話したように意識改革ですよ、意識改革。これは絶対に必要です。
意識改革といってもいろいろな意味があります。1つは先ほど社員向けの最後の挨拶でも、くどいぐらいに申し上げたので皆さん嫌になったかもしれませんが、要するに社会的な責任ですよ。不正は許さない、それが基本です。矢野新会長が言われたとおり、それは基本中の基本なんです。
その上に立って社会的なCSRあるいはコンプライアンスをどう考えていくのか。これが意識改革のひとつでもあるでしょうね。
それからもう1つはコスト、コスト意識というものがあるでしょう。予算の世界から管理会計の世界に入って来た。これは制度としてはみんな理解している、頭の中では理解しているんです。しかし「魂」が理解しているかどうか。これからですよ。
要するに金にはコストがかかる。時間にもコストがかかる。予算の世界とまったく違う世界ですから。コスト意識の問題が1つあるわけです。
それから矢野会長が先ほど言われたように、お客様第一ですよ。われわれの目線の先には何があるのか、お客様、真の株主の国民ですよ。これは民間企業であれば当たり前の話です。
われわれの目線の先にあるものは、政府ではないんです。政府は国民の代理なのです。政府という存在を通して、われわれの真の株主は国民。目線は国民にお客様に。
はっきり言ってこの3つの意識改革はだいぶ進んできていると思いますが、「道半ばだ」とも思います。そういう意味で、今申し上げた2つ。「総合力の発揮」、「意識改革」、これを矢野新会長にもしっかりと引き継いでいきたいと考えています。
そんなところでよろしいですか。

 

(会長)

私に対するご質問です。
「PDCA」のうちのPですね、これは「チャレンジⅤ」がそのものだと思います。道路を造って運営する方はこの5年間でかなり具体性のある計画になっているわけですが、関連事業の方がまだまだこれからなんですね。いろいろな考え方が盛り込まれていて、そこにあらゆるヒントが隠されている、示されていると思いますけれども、私はやはりこの関連事業、SA・PAというのは宝の山だと思っています。
これは本当に全力を挙げていいアイデアを集めたい。先ほど衆知と言いましたが、これは社員の衆知だけではなく、外部の専門家の本当に専門性の高い意見も聞くべきだと思っています。
そういうつもりで準備に入っているわけですが、それによってプランそのものも充実するし、これから実行段階に入っていった中でもまた新しいアイデアが出てきてプランそのものが大きくなります。
昔「QC」(Quality Control)、品質管理で「PDS」という言葉は最近は使われなくなってきているんですね。PLAN-DO-SEE。見ているだけでは何にもならないではないかというのが最近の考え方の根本で、CHECKしてACTIONに結びつける、そうするとそれが新しい計画というものにまたフィードバックされていくということですね。そういうプロセスをみんなで実感するということが大事だと思うんですよ。
そうしますと小さな成功というものが、次の「より大きな成功」に結びついていく。それが本当に軌道に乗り出せばですよ、私はこの事業はうまくいくだろうと、こういうふうに思っています。
1番自由度のある事業分野は関連事業分野で、これは本当に宝の山だと思っています。
皆さんもぜひ何か機会がありましたらSA・PAをお訪ねいただいて、ご案内してもいいと思いますから、いろいろなアイデアを出していただけるとありがたいなと思っているくらいです。
それから私、先ほどのご質問に答えていなかったな、というところがありまして、この会見なんですけれども、ぜひ続けていきたいと思っています。私自身がここに出席して、直接皆さまと意見交換、Q&Aにあたりたいと思っております。
お会いするたびに少しは知識・経験が豊富になっていくのではないかと思いますが、そういう意味では少しお時間を賜ればありがたいと思っています。

 

(司会)

では予定の時刻を過ぎましたので、これで質疑応答を終わらせていただきます。なお先ほどカメラマンの方から、新旧会長の握手をお願いしたいということでしたので、こちらの方に。

(新旧会長握手)

 

(会長)

どうもありがとうございました。

 

(相談役)

では本当に皆さんどうもありがとうございました。