NEXCO 中日本 中日本高速道路株式会社




2016年05月23日宮池社長定例会見

会見要旨

【司会】

皆さまお待たせいたしました。ただいまから第114回の定例会見をはじめさせていただきます。
本日の定例会見は、「高速道路リニューアルプロジェクト」として初の工事となる東名高速道路用宗(もちむね)高架橋の床版(しょうばん)取替工事を現場公開いたします。
それでは、リニューアルプロジェクトの全体計画につきまして、社長の宮池よりご説明します。

【宮池社長】

今年3月の定例会見で、「高速道路リニューアルプロジェクト」について発表しました。本日は、私のご説明のあと、東名高速道路用宗高架橋の工事を現場公開します。
資料1-1をご覧ください。
(1ページ目)
当社は、東名高速・中央道など、約2,000kmの高速道路を管理しています。開通から最も経過している路線は名神高速で、既に52年が経過しています。
右側のグラフは、開通からの経過年数を示しています。内側がNEXCO3社、外側が当社の高速道路で、開通から30年を経過した道路の割合が、NEXCO3社で4割、当社で6割となっており、他社に比べ老朽化した路線が多いことが特徴です。
こうした中、これからも暮らしや経済を支える大動脈としての役割を果たしていくため、早期に「高速道路リニューアルプロジェクト」を進めていくことが必要です。 
(2ページ目)
高速道路は、経過年数の増加の他、厳しい使用環境から、老朽化が進展しています。老朽化を加速させる一例として、
1.大型車交通量の増加とともに、総重量等を超過した法令違反車両の通行
2.積雪寒冷地の開通延長の増加や凍結防止剤散布使用量の増加
などが挙げられます。
(3ページ目)
このグラフは、日本の現状として、橋梁を建設年度別に表したものです。
全国の橋梁で、建設後50年を経過した2m以上の割合は、2013年で18%なのが、10年後には43%となり、高速道路のみならず、日本の橋梁が高齢化している状況が分かります。
(4ページ目) 
このグラフは、日本とアメリカの橋梁の建設時期を表したものです。
アメリカは、1980年代に多くの道路施設が高齢化し、「荒廃するアメリカ」と言われる事態に直面しました。これは、1930年代のニューディール政策で大量建設された道路が約50年後に老朽化が顕著になったことが一因です。
日本では、アメリカから30年遅れて高度経済成長時代に多くの橋梁が建設されました。多くの道路が1960年代に建設され、アメリカと同様に50年後の2010年代に高齢化を迎えています。 
(5ページ目)
アメリカでは、「荒廃するアメリカ」以降、数回にわたり陸上交通法の制定により道路投資を大幅に拡大しています。その財源は自動車燃料税(特定財源)の拡充により確保し、改善に努めています。改善された社会インフラは、その後のアメリカの発展を支え続けています。「荒廃する日本」としないために道路を管理していく必要があります。
(6ページ目)
ここからはリニューアルプロジェクトの内容をご説明します。
まず、今回の用宗高架橋でも実施する橋梁工事の内容ですが、損傷した床版を耐久性の高いコンクリート床版に取替えます。
この他に、取替えた床版の耐久性向上を目的に、水や塩化物の浸透を遮断するため、高性能な床版防水の施工や桁の補強なども実施します。
(7ページ目)
次に土構造物とトンネルの工事内容です。
土構造物の代表例として、山を切った状態の切土のり面の長期安定性を確保するため、のり面の補強に使ったグラウンドアンカーの防食性能を高くし、排水機能も強化します。
トンネルの代表例として、周辺の土圧に対して安定性を向上させるため、トンネル底面をコンクリートにより逆アーチに結合することで、耐力を増加させ、沈下や変状の防止を図ります。 
(8ページ目)
次に工事の工夫についてご説明します。
一例として、写真は実際に今回の用宗高架橋で使用する床版の写真ですが、工場で製作したプレキャスト製品を現場に搬入します。プレキャスト製品を採用することで、工事期間の短縮や、品質や耐久性の向上に寄与します。同様に壁高欄についてもプレキャスト製品を採用しています。
(9ページ目)
次に交通規制の内容です。
今年2月に新東名・浜松いなさジャンクション(JCT)~豊田東JCT間が開通したことにより、約200kmのダブルネットワークが形成されました。このダブルネットワークも活用し、可能なかぎり交通への影響を抑えられるように、工事時期や規制方法も検討します。規制にあたっては、通行止めを極力回避して、上下線両方向を確保する規制を採用する予定です。 
(10ページ目)
次に集中工事との違いについて、ご説明します。
リニューアル工事は、高速道路の本体構造物を長期にわたって健全に保つため、大規模で長期間に及ぶ工事が必要となります。一方、集中工事は、草刈や路面補修など、道路を維持管理するためにおこなう工事を短期間に、集中的にまとめておこなうものです。
リニューアル工事は、場所は限定されますが、大規模で長期間な工事となります。皆さまのご理解とご協力をお願いします。
(11ページ目)
次に、今年度実施する工事をご紹介します。
用宗高架橋以外の工事として、先週から中央道岡谷JCT~伊北インターチェンジ(IC)間でリニューアル工事を実施しています。今年の秋には、さらに中央道と北陸道でリニューアル工事を予定しています。現在、準備をおこなっており、準備が整い次第、詳細をお知らせします。
リニューアルプロジェクトは、当社だけではなく各高速道路会社でも始まっており、交通規制の調整など連携して工事を進めていきます。
また、交通規制やプロジェクト内容など詳細については、各高速道路会社や日本高速道路保有・債務返済機構のホームページでご確認ください。
(12ページ目)
最後に、「高速道路リニューアルプロジェクト」の事業費は、今年度が約300億円、全体計画15年のうち最初の5年間で約2,000億円、その後5年単位で4,000億円、4,000億円を予定しており、高速道路を更新・修繕し、次の世代へつないでいくための事業を実施していきます。
引続き、ご理解とご協力をお願いいたします。
以上でご説明を終わります。

【司会】

資料2の「事業の現況」につきましては、今回は配布のみとさせていただきます。

【司会】

それでは、これから皆さまからのご質問をお受けします。

【記者】

リニューアル工事に必要な巨額の修繕費が経営に与えるインパクトと予算の手当について教えてください。

【宮池社長】

リニューアル工事は15年間で約1兆円、NEXCO3会社で合計約3兆円の事業となります。本事業に必要な財源を確保するため、料金の徴収期間を約10年間延長させていただきました。経営につきましては、高速道路機構との協定に定められた中で実施するため、特段問題はないと考えています。

【記者】

対象箇所について、橋梁やトンネルなどが何箇所ぐらいか、また、どのように優先順位をつけているのか、教えてください。

【社員】

昨年3月25日に公表している延長では、大規模更新の対象橋梁として約74km、大規模修繕の対象橋梁として床版約100kmです。この数量は全体事業として算出していますが、対象箇所については、決まり次第発表します。

【記者】

静岡県の場合、東名高速のリニューアルは単なる老朽化の観点だけに留まらないと考えますが、防災の観点から会社の見解を教えてください。

【宮池社長】

先般の熊本地震では、多くの橋梁が被害を受けました。当社管内の橋梁につきましては、落橋防止などの対策をしていますが、今回の熊本地震で発生した跨道橋の落橋や、のり面の災害などの事象を参考にしながら、さらに信頼される高速道路を目指していきたいと思っています。大規模更新の中でも、対応できるものがあれば取り入れて進めていきたいと考えています。

【記者】

跨道橋の話が出ましたが、中日本管内の跨道橋の数を教えてください。

【宮池社長】

新東名の愛知県区間の開通前の数字ですが、当社管内で概ね1,000橋弱です。

【記者】

昨年春に、国土交通大臣の認可を受けたと思いますが、その時は昨年から始めると仰っていたと思うのですが確認させてください。

【社員】

昨年の3月25日に国土交通大臣から更新事業の実施について、道路整備特別措置法に基づく許可を受けました。その後、工事の着手に至るまで、調査、設計、工事の発注などの準備を進めてきました。今般、用宗高架橋のリニューアル工事を現場公開できる状況になった、とご理解いただければと思います。

【記者】

昨年から始まっているという理解でよろしいでしょうか。

【社員】

そのとおりです。

【記者】

今後の事業費は、5年間単位で約2,000億円、4,000億円、4,000億円ということですが、東西高速道路会社、首都高速、阪神高速も含めて大規模更新・修繕事業が同じような時期に集中することで、人と資材が不足するという懸念についてはいかがでしょうか。

【宮池社長】

リニューアル工事につきましては、まずはパイロット的に創意工夫、研究、あるいは試験施工しながら実施します。また、工事発注につきましても不調不落の対策をおこない、業界団体とも連携し、計画的に工事を進めていくということが大事ではないかと思っています。また、東西会社などとも連携しながら実施していきたいと思っています。

【記者】

「連携」というのは、具体的にはどのようなことでしょうか。 

【宮池社長】

例えば物流トラックなどは、九州から東京まで通して走行しますので、各社がバラバラに工事をおこなっていると、お客さまにもご迷惑がかかるということもあります。同時期に工事が集中しないようにお互いに調整しながらやっていくということも必要ではないかと思っています。これから工事が、ますます増えてきますので、このような課題を調整していかなければならないということです。

【記者】

工事区間は開通から47年ということですが、老朽化に対する危機感についてどのような問題意識を持っているか、改めて教えてください。また、このタイミングの工事着手になったということに関して全く問題はなかったと考えているのか、お考えを教えてください。

【宮池社長】

当社が起こした笹子トンネル事故でお亡くなりになられた方々のご冥福を心からお詫びするとともに、ご遺族の皆さまに対しましても深くお詫び申し上げます。
事故をきっかけに社会インフラの老朽化に対する国民の皆さまの関心が高まったと認識しています。高速道路についていえば、名神高速が52年経ち、老朽化が進んでいることは確かです。先ほど、「荒廃するアメリカ」というご説明をしましたが、そういう状況になってしまっては遅いので先手を打っていこう、というのが当社の考え方で、これからしっかりとプロジェクトを進めていきたいと思っております。特に老朽化が進んでいるところ、進み方が緩やかなところなど、場所によって違いますので、老朽化が進んでいるところから、手遅れにならないように計画的に進めていく予定です。

【記者】

もう少し早く対策をとれば良かった、というお考えはありますか。

【宮池社長】

これまでの補修履歴を確認すると、繰り返して対策を実施し、現在まで持ち堪えてきたというのが実態です。ライフサイクルコストの観点からも、本格的に対策をとった方がいいのではないか、と判断した結果であり、適切だと考えています。

【司会】

ご質問が途切れたようですので、これで定例会見を終了させていただきます。