西澤 広:日本写真家協会会員 / 青山 佳世:フリーアナウンサー (順不同・敬称略)
西澤 広:日本写真家協会
■テーマ1「高速道路と四季の風景部門」
<最優秀賞 「みかん山の軌跡」 永田 雅一 氏>
オレンジ色のミカンと富士山、新東名と中部横断道を結ぶ新清水JCTを雄大な自然の中で、互いをバランスよく配置した構図が魅力的。スローシャッターで表現した自動車のライトがアクセントになりました。
<優秀賞(春) 「春はここから」 長谷 薫 氏>
中央道の駒ケ根ICから車で5分ほど走った光前寺周辺からの絶景は、大自然に吸い込まれてしまいそうです。咲き誇るスイセンと山頂に雪を残した南アルプスが競演し、春の訪れを知らせているように感じます。
<優秀賞(夏) 「黄昏の刻」 丹羽 明仁 氏>
夕暮れの時間帯に浜松SA付近で、新東名の上下車線を左右対称にしてユニークな構図で大胆に仕上げました。シルエットの山に細長く延びる車線を自動車のライトが照らし、幻想的な雰囲気に包み込まれます。
<優秀賞(秋) 「未来へつながる」 上杉 裕昭 氏>
東海環状道が、青空とたわわに実る稲穂の壮大な景色と調和して溶け込んでいます。建設中の養老ICといなべICの工事区間で、地平線からニョキッと橋げたがそびえ立つ田園風景にワイド系レンズで迫りました。
<優秀賞(冬) 「雪海原に浮かぶ夢幻回廊」 山中 章平 氏>
三重県いなべ市の東海環状道で、大安IC~いなべIC間が未開通だった2025年2月10日に撮影しました。でこぼこした雪の陰影が表現され、静けさが漂う白銀の世界に高速道路が浮かんでいるように感じます。
<佳作 「夏空を見上げて」 岩﨑 悠馬 氏>
山肌から現れた東名の皆瀬川橋が、優雅にアーチを描き存在感をアピールしています。青空と白い雲、樹木の緑色、鮮やかな赤い橋は色の組み合わせが豪華で魅了されます。下から見上げた構図はベストアングル。
<佳作 「満開の談合坂」 山下 秀幸 氏>
山梨県上野原市の中央道の談合坂スマートICから5分ほど走り、華やかな季節に囲まれた談合坂SAを眺めました。青空にサクラを配置し、濃いピンク系のハナモモが際立って作品全体を引き締めています。
<佳作 「リゾートエリアの朝焼け」 堤 康博 氏>
太陽が昇る三重県桑名市の伊勢湾岸道。黄金色に輝く景色の中を湾岸揖斐川橋がゆったりと走り抜けています。橋と川の間に見える観覧車と小舟がアクセントになって、静かな景色に動きを演出しました。
<佳作 「手塩をかけて」 岩浅 利泰 氏>
静岡県小山町で、東名足柄橋と田植えを終えた水田を絡めて作品に仕上げました。空に向かって突き出した橋の主塔やケーブルが、苗が植えられた水面に映るアングルは、隠れたベストポジションからの撮影です。
<佳作 「太陽への道」 山下 多津美 氏>
静岡市清水区で富士山と海が望める薩埵峠。駿河湾の穏やかな海面にオレンジ色の光を放ちながら、太陽が昇っていく瞬間をF22に絞り込み、1/8秒のスローシャッターで撮影した美しい色調に癒されました。
<入選 「ツツジの向こう」 大学 肇 氏>
長野県の岡谷ICから車で約12分の鶴峰公園で、丸く刈られたツツジが、もこもこ重なって美しく整備されています。華やかに赤や白、ピンクの花を咲かせ、後方には中央道が控えめにスーッと横切っています。
<入選 「茶畑と橋梁」 外川 俊行 氏>
神奈川県山北町に緑がまぶしい茶畑が広がっています。新東名で建設中の山北天空大橋は、クレーンを乗せアーチを描いて山間を縫うように通っています。周辺環境とのハーモニーが美しく印象に残りました。
<入選 「水面を飾る」 村里 茂延 氏>
浜松市浜名区の三ヶ日ICから8分ほど車で走り、浜名湖の水面に揺れて映る東名の照明を比較明合成のテクニックを使って表現しました。何本も帯状になって伸びる光は鮮やかで、暗い夜を飾り神秘的。
<入選 「高速道路で観覧車へ」 服部 将啓 氏>
東海北陸道の川島PAに併設し、直接行くことができる川島ハイウェイオアシス。ズバリ配置された観覧車がひときわ目立ち、右上から左下になだらかに流れるような道路がカーブを描く構図は目を引きます。
<入選 「天空の道」 小笠原 敦 氏>
浜名湖の上を走る東名に、青空高くモクモクと白い雲がピッタリ覆いかぶさるように広がっています。作品の大部分を雲が占め、思い切ったアングルはシンプルで力強く、スケールの大きさに圧倒されました。
■テーマ2「あなたのとっておき風景部門」
<優秀賞(春) 「早春の河津桜ロード」 栗木 信夫 氏>
伊勢道の一志嬉野ICから車で約20分の笠松河津桜ロードで撮影しました。水面に映るサクラと枝ぶりが同じようなサクラを作品の中央で組み合わせ、互いに左右を対称にしたアングルは抜群のアイデアです。
<優秀賞(夏) 「夕凪の白杭」 吉田 拓史 氏>
新湘南バイパスの茅ヶ崎海岸ICから約12分の鵠沼海岸。夕暮れの穏やかな海岸に海水浴とサーフィンを分ける杭がずらりと並んでいます。変化していく色合いが美しく、海外を思わせるような雰囲気が印象的。
< 優秀賞(秋) 「中山道髄一の庭園秋」 小口 照人 氏>
長野県下諏訪町で本陣岩波家の室内から色鮮やかな庭園を捉えました。天井や床、梁や柱で仕切られた紅葉は、絵画が額に入って飾られているように感じます。時間を忘れて、いつまでも見とれてしまいます。
<優秀賞(冬) 「飛翔」 竹田 等 氏>
愛知県蒲郡市の竹島海岸は、東名の音羽蒲郡ICから車で約20分。竹島を背景に、空高く飛び回るユリカモメをファンタジックに捉えています。反射を利用したリフレクション写真で構図よく全体をまとめました。
<佳作 「恋愛成就」 酒井 香江子 氏>
東海北陸道の飛驒清見ICから車で約30分の飛騨市古川町で、伝統行事の「三寺まいり」を情緒たっぷりに撮影しました。着物姿の女性が願いを込めて川に流したとうろうが、水面に揺れて臨場感が伝わってきます。
<佳作 「雪景を行く」 水野 敬雄 氏>
北陸道の砺波ICから車で約20分で行くことができる庄川狭。大自然に囲まれ雪化粧した渓谷が広がっています。機会があれば、波紋を残して進む観光船の中から、壮大な自然のパノラマを眺めてみたいです。
<入選 「静けさに雨の調べ」 田中 雅之 氏>
滋賀県甲良町の豊かな自然に包まれた西明寺まで、名神の湖東三山スマートICから車で約5分。ゆったりとした雰囲気の中で、樹木や参道が雨に濡れてひときわ強調されています。参道の階段に時代を感じました。
<入選 「水無月のお祭り」 辻森 章浩 氏>
6月15日に東名の富士ICから近い富士市吉原地区で、吉原祇園祭を華やかに捉えました。賑やかに街中を進む山車や人物を小さく配置し、手前にドカーンと花を絡ませたローアングルからの撮影は迫力満点です。
総評「第18回高速道路と風景フォトコンテスト」
「第18回高速道路と風景フォトコンテスト」は、季節を感じる「高速道路と四季の風景部門」と「あなたのとっておきの風景部門」の2部門にテーマが分かれ、バラエティー豊かで楽しさが伝わってくる応募作品が審査会場にずらりと並びました。夕暮れの時間帯に新東名の上下車線を左右対称に捉えたユニークな作品、未来に向かって躍動し続ける建設中の高速道路など鮮やかでダイナミックな力作が印象に残りました。限られた撮影条件の中で思い通りになるのは難しいものですが、カメラポジションや撮影時間帯を工夫しながらチャレンジすることが、写真の楽しさだと考えます。
青山 佳世:フリーアナウンサー
「第18回高速道路と風景フォトコンテスト」審査を終えて
長くて暑い夏がようやく終わって秋が来たと思ったら、あっという間に通り過ぎて冬になろうとしています。季節の移ろいを楽しみ誇ってきた日本の季節感が変わりつつあるのは寂しい限りです。
今年もたくさんの作品の応募をいただきありがとうございました。少しでも効率よく審査ができるように毎年工夫を重ねていますが、やはり同じように悩ましい、嬉しい悲鳴をあげた末、バランスよく素晴らしい作品を選ぶことができたと思います。
今年の印象は、高速道路が入った風景に優秀な作品が増えたことです。ここ数年、高速道路の入った作品が少し弱いと感じていましたが、今年は違いました。手前に季節の花や樹木をあしらった高速道路のある風景、小さく高速道路を入れて風景を際立たせた作品、中にはどこに高速道路があるのか審査員で探した作品もありました。
すでに開通しているもの、建設中の高速道路などバリエーションに富んだ作品があって、選びながら実に楽しい時間でした。
中でも最優秀賞に選ばれた作品は、地域の特徴と季節感、高速道路がバランス良く配置されていて、絶妙な撮影ポイントを選ばれました。高速道路が地域の風景に溶け込んでいる様子が感じられて好感が持てるとともに、開通前から建設中の高速道路を好意的に眺めてくださっていることも感じ取れました。
以前から、建設中や工事中の風景は、現場にいる方でないと撮ることができない瞬間が多いと思ってきました。一般の人は朝焼け、夕焼け、夜景、四季の彩りの中の工事の風景、工事の進捗に合わせた絶好の瞬間に現場に行くことはなかなか難しいものです。
私も実は往々にしてあるのですが、「記録」用に写真を撮ることがあります。状況を客観的に残します。でも作品となると、美しさ、迫力、季節感などを強調した形で撮る必要があります。撮影した方の感動や表現したいことが、見た方に伝わるような撮り方をする必要があります。最高のタイミングに立ち会うことと、それを写真の中で表現することは難しいかもしれません。もちろん記録として「事実を淡々と撮影して語ること」の重要性もあります。
橋梁の真下から撮影された大迫力の作品も素晴らしかったです。橋梁のデザイン性の美しさが見事に表現され、設計された方がご覧になったら、さぞ喜ばれることでしょう。
四季の風景においては、実際の季節が変わってきたことで、撮影月とイメージする景色が一致しなくなったということです。「夏の風景」に見える作品の撮影月が10月であったり、秋の風景が12月の撮影であったりというケースが出てきて、戸惑うことがありました。春夏秋冬のイメージする風景と実際に撮影できる月が明らかに変わりつつあるということです。ただ四季に対するイメージ、ことにカレンダーの場合には変わることはないでしょう。
2026年も、皆さんが撮影された高速道路と沿線の風景を眺めながら、実りの多い良い一年になりますよう心から祈っています。








