鳥居 正夫:写真家 / 青山 佳世:フリーアナウンサー / 宮池 克人:NEXCO中日本 社長 (順不同・敬称略)
鳥居 正夫:写真家
第11回目となる当フォトコンテストも、前回と同じ「高速道路と四季の風景部門」と「あなたのとっておき風景部門」との、2つのテーマでの募集ということで、審査会場である大会議室を埋め尽くした作品群を前に、とても賑やかな審査会となりました。
「高速道路と四季の風景部門」で<最優秀賞>に輝いたのは、木下安雄氏の「高速道路下に輝く」。とても力強い作品であり着想が素晴らしい。川面に映るシルエット気味の新東名高速の架橋が、空との絶妙な明暗差のなかで表現されていて、その空間に蛍が乱舞する軌跡が群青色の中でとても美しい。何度も試行錯誤を繰り返した中で出来上がった作品であろう。画面構成も秀逸!
<優秀賞>に選出された高橋敏郎氏の「風薫る」は、春の日差しの中、高さのある新東名の架橋を背景にたくさんの鯉のぼりが風に靡く様は泳いでいる魚を川底から見上げているようで面白い。
同<優秀賞>山下多津美氏の「雲流れる夏の朝」は、夏の暁の時間帯でまだ冷気を含んだ清々しい空気が伝わってくるような作品であり、丁寧に描かれた繊細な日本画を観ているようだ。
同<優秀賞>岩浅利泰氏の「つなぐ新東名」は、新東名架橋工事の基礎の鉄骨むき出しの部分が、今にも連結されようとしているダイナミックな構図の作品。富士山の山頂が下から覗き込んでいるのが面白い。
同<優秀賞>福田尚人氏の「雪晴れ」は、冬の気持ちのよい晴天の中、力強い雲を背景に駒ヶ岳の凍てつくような真っ白な雪、陽光に輝くコントラストが美しい。作者が命名した「雪晴れ」のタイトルも趣がある。
<佳作>中田幸一氏の「5年ぶりの御神渡り」などは、温暖化によって結氷することが稀になってしまった諏訪湖の「御神渡り」の風景を写したものである。画面の中にそれを注視する人々を交えることにより、より神秘的な出来事として表現しているのが興味深い。
「あなたのとっておき風景部門」で<最優秀賞>を獲得したのは松元澄夫氏の「桜エビ干し」。雄大な風景の中、名産の桜エビを天日干しする作業を実に巧く捉えている。まるで絵に描いた様な気持ちの良い富士山を背に、リズミカルな手慣れた手捌きが実に小気味よい。そよ風にのって画面の中から音が聴こえてくるようであり、ほのぼのとした情景である。
同<優秀賞>栗木信夫氏の「花みこしが舞う!」は、春らしい鮮やかな色に飾られた花みこしが足取りも軽く練り歩く様子が気持ちよく伝わってくる。みこしに寄って撮影されたカメラアングルが、あたかも祭りに参加している担ぎ手が撮影しているようで、迫力のある臨場感を醸し出している。
同<優秀賞>清水進氏の「夏燦々」は、真夏の向日葵畑、灼熱の太陽の下、いかにも超広角レンズでの撮影といった意図ではなく、やや控えめな距離を保ちながら向日葵を主題に配置することによって、メルヘンチックでさわやかな作品に仕上げている。人物との対比も気持ちが良い。
同<優秀賞>玉置良宗氏の「七福神が楽しい」は、郡上八幡あたりの秋祭りのシーンであろうか、なんと微笑ましい祭礼なのでしょう。裃の衣装を身につけた大人のお囃子を引き連れ、七福神に仮装した子供達が練り歩く様はユーモラスで圧巻!。このような祭礼が伝統的に引き継がれていることがすごい。
同<優秀賞>上野祐司氏の「富士に燃えて」は、「どんど焼き」と呼ばれている火祭り行事であろうか。小正月(1月15日)の行事で、正月の松飾りや書き初めなどを家々から持ち寄り、一箇所に高々と積み上げて燃やす行事である。雄大な富士山と重なり合って神々しく燃え上がる炎を、作者はぎりぎりまで露出を切り詰めることにより、より一層濃厚な色調の作品に仕上げている。
地震や台風など、日本列島が多くの自然災害に見舞われた年でした。
そんな中、さまざまなスポットや楽しいイベントなど、たくさんのご応募をいただきました。
次回も所狭しと埋め尽くした作品を前に、入賞作品候補に貼り付ける付箋を手にして右往左往する賑やかな審査会になりますよう、皆さまのご応募お待ちしています。
青山 佳世:フリーアナウンサー
私の家のカレンダーは このフォトコンテストで選ばれた皆さんの作品が掲載されたカレンダー、今年も残すところあと一枚となりました。高速道路や周辺の地域の魅力的な瞬間を納め、美しい風景や ダイナミックな風景にしばし見入る時間も至福の時間でした。
今年も新たな作品の選定に携わりましたが、素晴らしい作品を拝見できるのは楽しみでもあり、その中から入賞作品を選定するのは至難の技、判断難しく悩ましい瞬間でもありました。
このフォトコンテストは 撮る人の思いがこもった自由な作品と、カレンダーに掲載する写真という二つの顔を選ばなくてはいけません。作品としては魅力的ではあるけれど、カレンダーに掲載するとなると、横長の写真しか掲載できないとか、日にちと合わせた時にダークな色調だと暗いイメージになるとか、いろいろな観点が入ってきます。
また四季折々の風景写真を募集していますが、春と夏は多くの作品が集まり、秋と冬の作品が少ないという傾向があります。東名高速道路沿線の風景は多くの応募があるのに対して、美しい風景が沢山あって大勢の観光客が訪れている北陸エリアの応募作品が少ないのはとても残念です。写真を撮ることは大きな目的ですが、いろいろな地域を巡り、自分だけの発見や学びを体験し、地域の元気づくりに貢献するという貴重な経験を 写真という形で大勢の人に伝えていただきたいと思います。また、応募される方の年齢構成を見ると、例年60代、70代の方が多いようです。若い人たちの感性を生かした、新鮮で意欲的な写真の応募にも期待したいと思います。私は写真そのものの技術的な点については素人ですが、その瞬間を撮ろうと思って撮影された方の思いに共感しています。
皆さんからの素敵な応募作品のおかげで、来年も素晴らしいカレンダーができそうです。また次回も多くの皆さんの自由闊達な表現のもと、少しカレンダーを意識する、あるいは応募の少ないエリアから魅力的な風景を見つけていただくことも期待しながら、多くの素敵な作品に出会えることを楽しみにしています。