西澤 広:日本写真家協会会員 / 青山 佳世:フリーアナウンサー (順不同・敬称略)
西澤 広:日本写真家協会
■テーマ1「高速道路と四季の風景部門」
<最優秀賞 「桜花爛漫の先に」 岩﨑 悠馬 氏>
新東名の未開通区間で、“やじろべえ”のように橋脚から橋げたを伸ばして建設工事が進む河内川橋。ローアングルから青空を見上げ、満開のサクラと緑に囲まれた工事現場を色鮮やかに表現しました。開通が待ち遠しいです。
<優秀賞(春) 「春爛漫の道」 山下 秀幸 氏>
大井松田IC最寄りの「あぐりパーク嵯峨山苑」からの眺めは、サクラや菜の花が競演し春の訪れを感じます。ゆるやかなカーブを描いた東名が、大自然に溶け込みながら山間を縫うように通り抜けています。
<優秀賞(夏) 「走る」 外山 俊行 氏>
東名足柄橋に張られたケーブルが、力強くクッキリと存在感を主張しています。道路照明灯に上下車線が薄っすらと照らされ、名古屋方面に向かうトラックを流れるようなスピード感で見事に表現しました。
<優秀賞(秋) 「もうすぐリニューアル」 中村 則夫 氏>
日本海と寄り添うように走る北陸道の手取川橋で、大規模なリニューアル工事が進んでいます。橋げたの隙間から見える夕暮れの空が印象的でした。水平線に沈む夕日が静かに開通を待ち望んでいるようです。
<優秀賞(冬) 「光跡」 丹羽 明仁 氏>
三重県菰野町の御在所山上公園から車のライトが帯状に伸びる新名神(手前)、東名阪道、伊勢湾岸道(後方)の高速道路を構図よくまとめました。天気にも恵まれ、街中に光跡を残して流れる夜景は絶景です。
<佳作 「水面に揺れる」 上杉 裕昭 氏>
三重県亀山市の新名神で、優雅な景色が水面に揺れながら映り込んでいます。晴れ渡る青空の下に高架橋が走り、ドライバーからどんな眺めが見えるのでしょうか。大自然に囲まれながら爽快感があります。
<佳作 「美しすぎるJCT」 片岡 正光 氏>
カーブを描く中央道と圏央道を結ぶ八王子JCTが巨大な指輪のように美しく見えます。朝の光を浴びた道路の間から太陽がキラリと輝き神秘的。午前5時40分、ダイヤモンドJCTの早朝撮影おつかれさまでした。
<佳作 「朝焼けの高速」 日向 稔 氏>
グラデーションがかった朝焼けを山梨県上野原市付近で撮影。左隅に中央道を配置した作品は印象的です。シルエットになってスっと伸びる樹木をアクセントにし、全体をまとめてバランスよく仕上げました。
<佳作 「月光の錐ヶ瀧橋」 福田 尚人 氏>
新名神の錐ヶ瀧橋を見上げ、夜空に降りそそぐ星を比較明合成(連続撮影した写真の明るい部分を重ねていく…)で表現しました。無数の星に見守られ、高速道路が未来に向って躍動しているように感じます。
<佳作 「深夜の老朽橋移動」 村上 敏幸 氏>
中央道の上空を横断する跨道橋「上の久保橋」が、老朽化で深夜に取り外されています。山梨県の談合坂SA付近でタイヤがたくさん付いた巨大な作業車に乗せられ、夜間通行止めの大規模な工事に驚きました。
<入選 「浜松の冬の旅人」 秋葉 宏幸 氏>
ユリカモメが賑やかに飛び交う、天竜浜名湖鉄道の浜名湖佐久米駅。列車の周りで羽を広げて、カメラに向って来るユリカモメは迫力十分。駅のホームからは、目の前に浜名湖の上を通る東名の高架橋が見えます。
<入選 「新東名の下で」 篠田 光雄 氏>
青空を横ぎるように通り抜ける、愛知県岡崎市の新東名。高架橋の下で、風に吹かれて泳ぐコイノボリは気持ちよさそうです。カラフルな風景を楽しそうに見上げる家族連れの姿は、清々しく心が癒されました。
<入選 「夏空に手を伸ばして」 鈴木 克哉 氏>
新東名で建設中の河内川橋をアップで捉えました。青空を背景にクレーンを乗せた橋が、互いに握手しようと手を伸ばしているように見えます。タイトルも素晴らしく、感性豊かな作品に仕上がっています。
<入選 「レガッタ大橋を仰ぐ」 原田 史生 氏>
矢作川の水面に揺れて映る東海環状道の赤い勘八橋。穏やかな自然に溶け込んだ景色は、絵画のように見えます。互いに進み方が違う、レガッタと橋の上を通過するトラックのタイミングを見逃しませんでした。
<入選 「麦秋のいなべ路」 武藤 好美 氏>
三重県いなべ市で黄金色に輝く麦畑。青空の下で風に吹かれて建設中の東海環状道の下に広がっています。垂れ下がった麦の穂にグイッと近づいたカメラポジションは、絶妙なアングルで迫力に圧倒されました。
■テーマ2「あなたのとっておき風景部門」
<優秀賞(春) 「春はあけぼの」 水野 敬雄 氏>
富山県の富山西ICから車で15分ほどの呉羽山から、朝日に照らされた立山連峰を逆光で捉えました。タテ写真の薄暗い上の部分を樹木の枝や葉で工夫し、絶妙なアクセントを付けて日の出を表現しました。
<優秀賞(夏) 「威風堂々」 倉本 明 氏>
滋賀県長浜市の管山寺で、山門の手前にある巨大な2本のケヤキを迫力満点にローアングルで撮影しました。北陸道の木之本ICから車と徒歩で約40分。緑の葉を付けて堂々とした姿を見に行きたいです。
< 優秀賞(秋) 「海苔網(あみ)」 間瀬 紳一郎 氏>
三重県南伊勢町の穏やかな海面に、カラフルなノリの網が広がっています。海中から網を止める支柱が数えきれないほど突き出した光景は印象的。舟で作業する人を入れ、あたたかみのある作品に仕上がりました。
<優秀賞(冬) 「宿場を彩る」 早川 幸夫 氏>
中央道の伊那ICから車で約40分、アイスキャンドルの光が輝く幻想的な奈良井宿。道を挟んだ両側の古い街並みの間に色鮮やかな花火が打ち上げられ、3秒のスローシャッターで構図よく見事にまとめました。
<佳作 「月城」 中山 晃 氏>
岐阜城と満月を望遠系レンズで距離を圧縮させて、ダイナミックに切り取って表現しました。月が見え始める時間帯や方角などの情報を収集し、ベストアングルからの撮影です。満月の大きさに目を奪われました。
<佳作 「新米、送ろうかね」 長谷 薫 氏>
中央道の飯田山本ICから車で約30分、山の斜面で収穫時期を迎えた「よこね田んぼ」が広がっています。どっしりと丸太に寄り添って腰掛け、美しい景色を眺めながら棚田を見守っているように見えます。
<佳作 「海風」 山田 徹 氏>
愛知県蒲郡市の三河湾沖で熱戦を繰り広げるエリカカップヨットレースは豪快です。帆に潮風を受けながら斜めになって荒波を突き進むヨットの撮影は、望遠系レンズで陸からですか、撮影位置が知りたいです。
<入選 「明日は厳冬」 大塚 英夫 氏>
1月15日に長野県の美ヶ原高原から見える幻想的な光景。大自然に囲まれたパノラマの中に人物が写り込み、壮大なスケールを表現しました。ゆっくり変化していく微妙な色合いの景色に吸い込まれそうです。
<入選 「満開の裾野」 菊地 和夫 氏>
東富士五湖道路の山中湖ICから車で約10分。雪化粧した富士山の裾野で、青空を映した川の土手に沿ってサクラやスイセンの花が華やかに咲いています。春を感じさせる裾野の四季を構図よく切り取りました。
<入選 「蛍舞う里」 今野 剛典 氏>
東名の御殿場ICを降りて車で約15分、光跡を残して舞うホタルを比較明合成のテクニックで表現しました。シルエットになった雄大な富士山を背景に、水路の上を飛び交うホタルを優雅で豪快に仕上げました。
総評「第17回NEXCO中日本高速道路と風景フォトコンテスト」
猛暑が続きましたが、季節を感じる「高速道路と四季の風景部門」「あなたのとっておきの風景部門」の2つのテーマに合った応募作品が多数寄せられました。
高速道路のリニューアル工事や作業区間の通行止め情報がテレビや新聞などで伝えられ、今しか見ることのできない建設中の高速道路の作品が目立ちました。“やじろべえ”のように橋脚から橋げたが伸び、まもなくつながりそうな建設現場を華やかに表現した作品が印象的です。また、巨大な跨道橋の大規模な撤去作業など、撮影のための情報収集の大切さも実感させられました。
写真はシャッターを押せば誰でも写すことができる時代ですが、フォトコンテストとなると奥が深く、イメージを膨らませて思いどおりになるのは難しいものです。また、それが写真の楽しさだと考えます。躍動し続ける高速道路の四季や楽しい風景の季節を感じる作品の応募を多数お待ちしています。
青山 佳世:フリーアナウンサー
「第17回NEXCO高速道路と風景フォトコンテスト」審査を終えて
今年の始まりは能登半島地震が発生し中日本高速道路も、トイレカーや散水車の派遣などの支援をおこない被害を受けた地域の皆さんに心を寄せてきました。それぞれができることで復旧復興にエールを送りつつ前へ向けて進み 今年も一年が過ぎようとしています。コロナも落ち着き皆さんの行動が活発になってきました。各地に行くとインバウンドのお客さまばかりが目につきますが、私たちも混雑を避けて逆にもっと身近なところの魅力を探しに出かけたいものです。
今年もまた、楽しく悩ましいフォトコンテストの審査の季節がやってきました。無事に審査を終えてホッとしています。撮影場所が同じ作品もありましたが、映す方の感性で全く違う作品になっていました。また同じ場所でも季節によって様変わり、殊に建設現場は 日に日に現場の風景が変わっていきますから 審査していても飽きることがありません。毎年のようにチャレンジしてくださる方もありがとうございます。また今年は 初めて応募された方も多くいらっしゃり、最優秀賞初め入賞され、おめでとうございました。
シャッターチャンスは狙いを定めて長時間その場で待ち構えたり、あるいは何回も通ったりしてようやくその瞬間に出会うこともあれば、思わぬ場面に遭遇したタイミングをしっかり捉えて撮れることもあるでしょう。審査に当たる私には想像するしかありませんが、とはいえ 拝見していて直感的に感じるものがあります。その瞬間を逃さないように常に心構えはしておかないといけないということですね。神経を研ぎ澄ませていることは 感性を磨いていつも観察していないといけません。ただ よく美しい瞬間は瞼に焼き付けておく、ファインダーをのぞいていると それ以外の景色が目に入らなくて素晴らしい瞬間を逃すという説もあります。どちらもごもっともで 確かに私も両方の経験があります。
今年の最優秀賞に選ばれた作品はバランスドアーチの曲線と桜の柔らかさとのまさにバランスがとても素敵でした。河内川橋の建設現場は、審査の後私もご縁のある女性グループと一緒に勉強に訪れました。 注目の現場でしたから 多くの方たちも視察に訪れていました。撮影なさった時よりも数カ月後ですので もっとボックスが近づいていました。実は早く行かないとボックスがくっついてしまうと慌てたのですが、いえいえ この先繋がってからが 舗装を始め時間がかかるとのことでした。
どの作品も高速道路や四季折々の風景が組み合わされ 個性的な作品が多くその場所に行ってみたくなりました。人物を入れたものは今年も少なくて、個人的には、後ろ姿の人物が好きです。畔に肩寄せて並んで座っているお二人の姿は、長い人生が漂いなんとも微笑ましく ホット和んで作品があったかくなりました。
ここ数年感じていることですが、本来は活き活きとした人物の表情があると活気が出るのですが、肖像権の問題があって慎重になってしまいます。あらかじめ了解をとってから撮影すると自然な表情を撮りにくく悩ましいものです。
新しい年が始まろうとしていますが、写真撮影は もう次の年の準備に入っている方もいらっしゃるでしょう。どうしても季節によって 作品の多い少ないが出てしまいます。寒い時 暑い時にはよほど覚悟をしないと出かけるのも大変なだけに、写真を撮る機会も減ってしまいます。でも機会を見つけて 皆さんならではの瞬間を切り取ってください。有名な場所ではなくても身近な場所でも、目線を変えると素晴らしい宝が目の前にあります。2025年用のカレンダーをめくる前ではありますが 2026年用に向けて 来年も素敵な旅を楽しんでいただきながらのお裾分けとして、四季折々の作品を楽しみにお待ちしています