鳥居 正夫:写真家 / 青山 佳世:フリーアナウンサー / 小室 俊二:NEXCO中日本 社長 (順不同・敬称略)
도리 마사오 : 사진 작가
第15回をむかえた審査会、例年以上に盛り上がってます。軽いフットワークで挑まれた作品から高度な技術を駆使したベテランの方々の作品まで、会場狭しと並べられた数々の春夏秋冬。壮観です!
■テーマ1「高速道路と四季の風景部門」について
<最優秀賞>に輝いたのは、徳田夕美氏の『Gifu Stonehenge』。工事進行中の東海環状道の岐阜IC橋脚工事現場を捉えた作品。工事途中の限られた期間にしか見られない貴重な風景ですね。躍動感のある夕焼けの空の下、未完成な橋脚群が古代ヨーロッパの遺跡を連想させるような趣があり美しく表現されています。レンズの選択も的確ですね。
<優秀賞>(春)は、鈴木陵太氏の『海と山を繋ぐ』。山の斜面の茶畑から駿河湾を望む風景。薄暮の中、海岸周辺の市街地のライトアップが活気に溢れ、その間をつないでいる新東名の車の軌跡が美しい。茶畑など細部にわたるディテールが巧(うま)く表現されている。
<優秀賞>(夏)は、小笠原敦氏の『夕日に染まる帰路』。心に染み入る情景である。斜光である夕日の魔力なのか、「何も足さない何も引かない」真っ向勝負で向き合ったことが、この作品をより際立たせていると思われる。
<優秀賞>(秋)は、原田史生氏の『朝焼けアローズブリッジ』。アローズブリッジ自体個性的な意匠の橋ではありますが、作者の力強い画面構成に惹かれます。群青色の空の下、朝焼けの光で染められた橋脚の赤が際立っている。人が合掌しているようでもあり、複数の赤いワイヤーからエネルギーを放っているようにも見えるところが面白いですね。
<優秀賞>(冬)は、水野敬雄氏の『寒夜の軌跡』。立山連峰に向かって行く赤い尾灯の軌跡、工場地帯の煙突から排出される熱い蒸気、全てが一瞬に冷気の中に吸い込まれてしまうような冷たさがよく伝わってきます。撮影中の三脚も凍えていることでしょう。
その他、佳作4点と入選2点が選出されました。
<佳作>谷津和正氏の『美味しい三連符』。肩の力が抜けた表現が目を惹きました。アーチの先に見えている3本の橋の主塔。なるほど三連符、楽しい作品です。
<佳作>山下多津美氏の『八月の奔流』。稀にしか姿を見せない富士山の笠雲。手前には力強く流れる富士川であろうか、静の中に躍動感のある川の波動。画面構成が巧みでありキャリアを積んだベテランの味を感じます。
<佳作>岩附康則氏の『巨大船が行く』。望遠レンズの効果であろうか、夕暮れの中シルエットのトリトン橋の重なり方が面白い。そこに巨大な船が重なっていく。複雑な輪郭の影絵を見ているようですね。
<佳作>明間凜太郎氏の 『帰路』。 夕陽 に向かって○○!。 思わずカメラに収めたくなるような情景ですね。シネマの一コマを観ているようです。
<入選>吉村誠氏の『ハイウエイの新名所』。北陸道(南条SA)に出現する巨大な恐竜。水銀灯の照明下、独特な色調が目を惹く作品。因みに動いたりもするそうです。
<入選>岩浅利泰氏の『継ぐ大動脈』。除雪車4台の揃い踏みである。冬の5車線にも及ぶ東名での除雪作業。理にかなった車列での作業といい、その後に控える一般車の群れを、安全に導く姿はドキュメントである。
■テーマ2「あなたのとっておき風景部門」について
<最優秀賞>に輝いたのは、長谷薫氏の『柿景色』。色鮮やかな干し柿の乱舞に圧倒される。干し柿の生産ではとても有名な地域なようであり、梵鐘に影を落としている様子が寺院と分かる。場所こそ違え思わず正岡子規の有名な俳句が脳裏を過りました。
<優秀賞>(春)は、池宮正之氏の『月光に映える駒つなぎの桜』。樹齢450年をはるかに超える桜の
名所。星降る中、昼間ののどかな表情から一変し異様な雰囲気をただよわせている。手前の水田に浮かぶ花びらの渦も面白い。
<優秀賞>(夏)は、紫上祐子氏の『真夏のサンシャインブリッジ』。真夏の炎天下の中、真っ直ぐに伸びる橋が今にもとろけそうな描写。魚眼レンズ効果がドアスコープから覗き観ているようであり、悪戯心あふれる作品になっています。
<優秀賞>(秋)は、早川幸夫氏の『紙吹雪乱舞』。三河地方有数のお祭りである挙母祭り。黄色の紙吹雪が舞い上がる中、山車の後に連なる半纏姿の世話役の後ろ姿がとても粋ですね。
<優秀賞>(冬)は、角田恒雄氏の『白鳥の湖』。穏やかな湖面に羽を休める白鳥の群れ。茜色に染まった色調が美しい。バレエの舞台のように舞っている白鳥が描写されていればもっと違った世界になっていたかもしれません。
その他、佳作4点と入選3点が選出されました。
<佳作>栗木信夫氏の『春の五条川』。手染め職人によって鯉のぼりの糊を洗い流す春の風物詩。両岸には見事な桜並木が連なりその桜吹雪が川面に流れている。生活感が加わることでより魅力的な風景に一変しますね。鯉のぼりの色も美しい。
<佳作>河合覚氏の『夏到来』。初夏を彩る庄内観光祭。夜空に舞う花火を背景に勇壮な行燈「夜高あんどん」がそびえ立つ。赤を基調にした色調がぶつかりあう光景は圧巻であろう。
<佳作>伊藤裕也氏の『冬山に閉ざされた合掌造』。あいのくら合掌造集落と呼ばれ有名な白川郷とは別の集落のようです。周りを雪深い山々に取り囲まれ閉ざされた集落。温かな色調でライトアップされた情景はクリスマスにいただくデコレーションケーキの飾りのようでもあります。
<佳作>岩原辰幸氏の『雄大な氷瀑』。厳しい低温下で滝などの全てが凍りつく氷の芸術。2月でも氷点下が続く茅野市の横谷峡。自然の力を見せつけられる風景ですね。私より年上の作者、脱帽です。
<入選>竹岡正行氏の『明宝せせらぎ街道の芝桜』。春満開!です。50年ほど前から独りの婦人がコツコツ植え続けてきたといわれている芝桜。半端ない美しさですね。この作品を観ている私たちも、画面内のカップル同様幸せな気分になりますね。
<入選>松浦嘉人氏の『晩秋』。水路を挟む形で燃えたぎる紅葉が見事である。ライトアップの演出も効果的であり、水面に映る鮮やかな風情も面白い。川面をを主体にしたフレーミングも見てみたいですね。
<入選>深野達也氏の『澄んだ朝に』。彼方の山々が美しく連なってゆく。冬の早朝であろうか、手前の斜面の木々には霧氷か霜なのか、まるで花が咲いているようで優美な趣を感じます。雲海を主体に捉えがちであるが、作者のぶれない視点を感じます。
審査会を通じて 多岐にわたる「春夏秋冬」に出会えたことに感謝いたします。
鳥居正夫
아오야마 카요 : 프리 아나운서
中日本高速道路 フォトコンテスト 2022 講評
今年も楽しみにしていたこの時期を迎えました。今年は近い時期に撮影した作品が多くみられ、皆さんもコロナと向き合いながら 今までの生活に戻り、美しい風景を探して各地を移動しその風景をカメラに収める光景が目に浮かびます。毎年お送りいただいている方、新たに挑戦してくださった方、ありがとうございます。 来る年も夢を胸に良い年にしたいものです。
今年の特徴として感じたことは 夜景を舞台にした作品に素晴らしいものが多く接戦となりました。光の織り成す幻想的な風景は、高速道路にしても、四季を映す作品においても、秀作が多くあり、審査においても頭を悩ますことになり嬉しい悲鳴を上げたものです。
毎回の講評の中でも書いていますが、作品そのものの優秀さとともに、カレンダーに掲載するものとして、バリエーションあるものを選ぶことになります。色鮮やかな作品、パステルトーンの穏やかな作品、そしてモノトーンの水墨画のような世界を織り交ぜていくことになりますが、その年によって混戦するジャンルと季節があるのです。不思議なものですね。
さて、個別の講評は鳥居先生が毎年適切なコメントをしてくださっていますので、私は少し違った視点からコメントをいたします。
今回は高速道路の構造物を、これほどまでに幻想的な風景として撮影できるのかと思える作品に出会いました。最優秀作品となった「岐阜のStonehenge」です。
思わず「この場所はどこ?」「どこから見るとこんな風景になるのでしょう」と審査中に伺ったものです。
実は巷で話題となっている場所だそうで、その名もまさに「岐阜のストーンヘンジ」。 はじめは地元紙で話題になり、今や全国紙でも取り上げられているようです。
私は作品を見て、その場所へ行ってみたくなりました。
その場所とは、東海環状自動車道の岐阜インターチェンジの工事現場でした。昨年末ごろからインターチェンジとなる橋脚が立ちはじめ、今年の3月にはその数74基が並びました。
平らな土地ににょきにょきと立ち並ぶ風景は、まさにストーンヘンジ!現場の方々からすると普段見慣れた構造物をストーンヘンジに見立てる感性は「目から鱗」だと驚いておられました。このニックネームは一体どなたがつけたものでしょう。
そして夕日が沈む微妙な光線の中で橋脚を見事にとらえています。私たちも実際に写真片手に場所を移動しながら、どのあたりで撮影なさったのか、探していきました。現場の方々とおこなうこの作業もとても楽しいものでした。でも普通に映しただけではあの構図には絶対なりません。ましてあの光線の摩訶不思議なグラデーションは一体どんな日にお撮りになられたのでしょう。一度作者の方にお伺いしてみたいものです。
見る者の心をひきつけた風景ですが、工事は順調に進み、ストーンヘンジに橋桁が架けられつつあります。ところで実際のストーンヘンジにも橋桁のようなものが架かっているのだということで、ひょっとすると ストーンヘンジに一番そっくりな風景がまさに「今」なのかもしれませんね。
工事が進んでまもなくこの風景は見ることのできなくなるのは残念ですが、橋桁がつながり 一日も早く高速道路としてつながって人々の思いとモノを乗せて、地域を結んでほしいものです。
コロナも再び感染拡大をしていますが、十分に気を付けながらも移動も旅も再開していきたいものです。実際に行ってみたい、その場所を探してみたいという気分を沸き立たせてくれるようなインパクトのある写真を撮ってきてくださることを大いに期待しています。
来たる年もカレンダーを眺めてそれぞれ自分流に思いを馳せながら良き一年を送っていただければ嬉しいです。皆さまにとって良い年となりますように。