1. 安全性向上3カ年計画の取組み報告
  2. 取組み状況一覧
  3. vol.03 橋梁保全点検技術研修施設 名古屋大学構内のN2U-BRIDGE

安全性向上3カ年計画の取組み状況

実践的な研修による人材育成

NEXCO中日本は、「安全性向上3カ年計画」に基づき、体系化された安全教育を含む人材育成を進めています。その一環として、実践的な体験・教育が可能な研修施設の充実を図っています。
長年使われてきた実際の橋梁を利用した「N2U-BRIDGE(ニュー・ブリッジ)」。そして、屋内に高速道路を再現した「E-MAC(イーマック)」。この2つの研修施設で、社員の知識・技術力の向上を図ります。

橋梁保全点検技術研修施設 N2U-BRIDGE(ニュー・ブリッジ)

「ニュー・ブリッジ」は、名古屋大学とNEXCO中日本および中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社が共同で名古屋大学構内に設置した研修施設です。橋梁などのインフラの安全性や快適性を維持していくために、適切な点検・診断・評価を行う高い技術を持った人材を育成しています。ここは、実際に長年活用されてきた橋梁の部材を使って施設を再構築するとともに、さまざまな劣化サンプルも設置しています。時間の経過によって表れた変状を、より実践的に学ぶことができます。

年間工事規制回数の削減(試算)
  • 旧渋江川橋(富山県南砺市)
    供用年数:35年

    北陸自動車道に架橋されていた鋼鈑桁橋です。長年の疲労劣化で生じた床版のひび割れやコンクリートの劣化などが観察できます。

  • 旧日末橋(石川県小松市)
    供用年数:37年

    プレストレストコンクリート中空床版橋で、北陸自動車道の跨道橋として架橋されていました。コンクリートのひび割れが観察できるとともに、スライスカットした断面で内部状況も学べます。

  • 旧厚東川大橋(山口県宇部市)
    供用年数:74年

    国道190号に架橋されていた鉄筋コンクリートT桁橋。長年蓄積された塩害による鋼材の腐食とともに、コンクリートの中性化による変状が見られます。さらに修復箇所の再劣化なども観察できます。

  • 旧西枇杷島歩道橋(愛知県清須市)
    供用年数:51年

    日本で最初に架橋された歩道橋です。51年という供用年数による橋桁の錆びや床版のコンクリート劣化を見ることができます。

名古屋大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 橋梁長寿命化推進室長 中村 光

高度成長期に建設された多くの橋梁の高齢化が進み、その数は今後急速に増加していきます。既設橋梁の適切な維持管理は、ますます重要になっていきます。そのため、建設年代に即した橋梁の設計・施工に関する基本的知識を持ち、さまざまな劣化事象に対し的確な点検・診断・評価を行える人材の育成がいま強く求められています。
ぜひこの「ニュー・ブリッジ」を、高速道路のみならず、高齢化した構造物の安全性の向上に役立てていただければと思います。

主な研修内容

■空洞探査
点検ハンマーによる打音点検は音と振動で、赤外線サーモグラフィでは表面温度の違いから、コンクリート内部の空洞やひび割れ、はく離などを探査します。
■鉄筋探査
電磁誘導法などを用いて、コンクリート内の鉄筋の深さや位置を確認します。
鉄筋探査
■鋼材の疲労亀裂探査
鋼材の接合部は、渦電流探傷試験などを用いて、目に見えないような小さな表面の傷などを探査します。
鋼材の疲労亀裂探査
■クラックゲージによる
ひび割れ幅測定

目視点検ではクラックゲージを用いて、コンクリートに生じたひび割れの幅を測定し、劣化の状況や補修の可否を判断します。
クラックゲージによるひび割れ幅測定
■コンクリートの
推定強度測定

コンクリートの表面を打撃して、その反発度から強度測定するリバウンドハンマーを用いて、コンクリートの強度を確認します。
コンクリートの推定強度測定
■鋼橋の塗装厚測定
鋼材の腐食を防ぐための塗装は、時間とともに薄くなることがあるため、塗膜計を用いて、塗装の厚さに変化がないかを確認します。
鋼橋の塗装厚測定
■不可視部の点検
目視が難しい箇所を、ポールの先につけた点検カメラで撮影し、変状を確認します。
不可視部の点検
■中性化深さ測定
コンクリートが二酸化炭素によって中性化すると、内部の鉄筋が腐食しやすくなるため、中性化の深さを測定します。
中性化深さ測定
基礎コースプログラム(2日間) 形態
1日目 日本の橋梁の現況・橋梁の変状・
橋梁構造の概説・橋梁の維持管理の流れ・
点検手法・非破壊検査機器の原理
講義
2日目 ニュー・ブリッジ劣化状況説明・
点検機器の計測講習
ニュー・ブリッジ実習
検査点検コースプログラム(3日間) 形態
1日目 日本の橋梁の現況・基準の変遷・変状の概説・
劣化機構の推定(コンクリート部材)
講義
ニュー・ブリッジ劣化状況説明 ニュー・ブリッジ実習
2日目 劣化機構の推定(鋼部材)・橋梁の維持管理の流れ・
点検手法(非破壊検査)・国土交通省定期点検要領・
調書の解説・各機関の点検要領・点検の着目点
講義
3日目 ケーススタディ(損傷図作成・損傷判定・劣化機構の推定)・
点検機器の計測講習
ニュー・ブリッジ実習
「ニュー・ブリッジ」は、NEXCO中日本グループの社内研修だけでなく、官公庁・民間企業などの橋梁保全技術者の方のための研修・教育も実施しています。


ニュー・ブリッジについて詳しくはこちら イチオシ 名古屋大学・NEXCO中日本橋梁モデル N2U-BRIDGE

E-MAC技術研修センター

「E-MAC (イーマック)」は、機械設備などの「故障修理技術の習得」、「土木技術の習得」および「安全文化を身につけること」を目的に、岐阜県各務原市に開設されました。施設内には高速道路で使用されていた電気設備やトンネル非常用設備などを設置し、実際に現場で使用されていた設備を使って、点検や機能停止に伴う作業を学び、点検・修理技術の向上を図っています。
また、当センターは環境・災害への取組みとして、飲料水に活用できる井戸の確保、自家発電設備の整備、防災製品の備蓄や炊き出し設備の準備などを行っており、災害発生時に地域の避難拠点として貢献します。さらに、雨水を溜めて緑地に散水するなど環境に配慮しています。

年間工事規制回数の削減(試算)

E-MAC 技術研修センター センター長 中島 健次

私たちは名神高速道路の開通以来、高速道路施設の保全管理を担ってきました。しかし近年は、設備の高度化・集積化により故障が減少し、現場で経験を積む機会が少なくなってきています。 そこで、より現場に即した実践的な研修を行うことを目的に、「E-MAC 技術研修センター」が設置されました。ここでは、古い機材を再活用して保守点検技術や故障修理技術のスキルアップを図ります。また、あえて故障などの事象をつくり出すことでその対応力を養うとともに、身を持って危険への気づきを体験して安全意識の向上を喚起しています。熟練技術者から若い世代へ。これからも、安全のための技術を伝承してまいります。

所在地 岐阜県各務原市鵜沼各務原町7-71-10

主な研修内容

■水噴霧測定車による測定訓練
測定車を使用して、水噴霧設備の水量を測定する訓練を行います。
■水噴霧設備点検車による測定訓練
トンネル非常用設備の一つである水噴霧設備から放水される水量を、水噴霧設備点検車を使って測定する訓練を行います。
■ロープアクセス
高速道路の高所での点検作業のひとつである、ロープアクセス技術を実際に体験しながら学びます。
■ロープアクセス
高速道路の高所での点検に必要な技術のひとつである、ロープアクセスを実際に体験しながら学びます。
■トンネル照明設備点検
屋内に再現したトンネルで、照明設備の点検・清掃・構造検査を高所作業車を使って体験します。
トンネル照明設備点検
■道路情報板等の操作訓練
高速道路で実際に使われていた道路情報板を使い、基礎的な点検作業や故障時の復旧作業を学びます。
道路情報板等の操作訓練
■受配電・自家発電設備点検
給電や停電時の対応を行う設備で点検作業や復旧作業を体験。現場に設置しているものと同じ設備を使うことで、現場に即した対応を学びます。
受配電・自家発電設備点検
■足場・安全確認
高速道路の建設や点検・補修の際に必要となる足場を再現。実際に上って、そこで行う作業の安全技術を身を持って確認します。
足場・安全確認
■体感フィールド
大型スクリーンに高速道路の映像を映し出し、通行車両が途切れるのを待って、高速道路を横断して落下物を回収することなどを体験することで、危険に対する気づきを学びます。
安全文化醸成

施設担当者インタビュー

NEXCO中日本の研修施設の講師が
安全を維持するための研修について語ります。      

中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 能力・人財開発部 技術研修センター 係長 加藤 雄三
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