1. 安全性向上3カ年計画の取組み報告
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  3. 「ニュー・ブリッジとE-MAC 。現場に即した実践的な研修を、2つの施設で行っています。」

安全性向上を担うNEXCO中日本グループ社員

「ニュー・ブリッジとE-MAC 。現場に即した実践的な研修を、2つの施設で行っています。」

  • 加藤 雄三
    中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
    能力・人財開発部技術研修センター 係長加藤 雄三
    名古屋大学構内に開設した「N2U-BRIDGE」(ニュー・ブリッジ)で研修講師を担当。

NEXCO中日本グループの研修施設の中で、「ニュー・ブリッジ」はとても特徴的な施設だと聞いていますが。

加藤:この施設は、名古屋大学とNEXCO中日本グループとの産学共同プロジェクトであるということです。名古屋大学の研究能力と、当社グループのこれまでに培った点検技術を融合して、新たな点検技術の開発や既存技術の研鑽を行っています。さらに、国土交通省中部地方整備局をはじめとする行政機関や中部地域のさまざまな大学、民間企業・団体と研修協議会を組織し、その中で議論を重ねながら研修内容の充実を図っています。
また、実際に使われていた橋梁を再構築して、実践的な点検研修施設として生まれ変わらせたことが、ニュー・ブリッジの大きな特徴です。実際の橋梁の変状を教材として技術を磨くことができる研修施設です。

実際の橋梁を使うメリットを具体的に教えてください。

加藤:塩害や中性化など、長い時間の経過によるコンクリートの変状は、人工的に作り出すことが難しいのです。実際の橋梁であれば、「橋梁のどの部分に発生しやすいのか」「表面の状態から内部の変状をどう推定するのか」といった、実践的な研修が可能です。また、塩害や中性化などのさまざまな原因による変状を同時に学ぶことができます。
さらに、現場では同時に見ることが難しい初期・中期・末期という各段階の変状を比較しながら観察することができます。これによって、実際の現場での点検時に、それがどの段階の変状であるかが判断しやすく、補修計画が立てやすくなります。

4種類の橋梁を移設されていますが、そこでどのような変状を学べるのでしょうか。

加藤:1本目は、北陸自動車道の旧渋江川橋。35年間にわたる交通車両の重みや塩害によって生じた床版のひび割れやコンクリート劣化が確認できます。橋桁には目立った変状はありませんが、鋼橋の重要な点検項目である塗装状況や各部材の特徴を学ぶことができます。
2本目は、北陸自動車道の跨道橋として37年間供用されていた旧日末橋。架橋されていた時にはコンクリートの剥落対策・劣化防止のための表面保護がなされていた橋梁ですが、この表面保護を取り払った際に発見した縦方向のひび割れが見られます。さらに、スライスカットした断面も施設内に設置しているので、内部状況の観察が可能です。
3本目は山口県宇部市の厚東川に74年間架橋されていた旧厚東川大橋。この橋梁では、塩害が進行することにより、断面修復箇所が再劣化した事例も見ることができます。また、現在ではほとんど使用されていない鋼材の変状も学べるので、古い橋梁の点検に役立てることができます。
最後が国内最古の歩道橋である旧西枇杷島歩道橋。大きな変状はありませんが、時間経過による劣化を見ることができます。
他にもつり橋のケーブルの破断部材など、さまざまな劣化サンプルも教材として使用しています。


床版下面のひび割れ状況
(旧渋江川橋)

中空床版をスライスカットした断面
(旧日末橋)

再劣化した断面修復箇所
(旧厚東川大橋)

床版下面のひび割れ状況
(旧渋江川橋)

中空床版をスライスカットした断面
(旧日末橋)

再劣化した断面修復箇所
(旧厚東川大橋)

研修プログラムについて、教えてください。


各コースの技術レベルと位置付け(イメージ)

加藤:研修項目は、鉄筋探査、空洞探査、鋼材の疲労亀裂探査、クラックゲージでのひび割れ幅測定、コンクリートの推定強度測定、鋼橋の塗膜厚測定、不可視部の点検、中性化の深さの測定などがあります。
また、名古屋大学と協力して、一般の技術者や学生の方を対象にした研修も行っています。研修コースは、経験年数と各技術者のレベルに合わせてご用意しています。現在は、未経験者の方にも受講いただける「基礎コース」、実際に現場で点検業務を行う方を対象にした「検査点検コース」を行っていますが、変状を評価し補修・補強計画を立案する技術者向け「診断評価コース」も、今後開講していく予定です。
さらに、業務が忙しく時間の制約からすべての研修を受けられない方のために、カリキュラムを一部入れ替えて短期間で行う「オーダーメイド研修」も行っています。


各コースの技術レベルと位置付け(イメージ)

受講者からの評価はいかがですか。


検査点検コース受講者の
満足度アンケート調査結果

加藤:受講者の方には、アンケートをさせていただいています。その中で、「数多くの劣化を同時に見ることができて、とても勉強になった」「現場での点検作業が、より明確になり、判断がしやすくなった」などの声が多く聞かれます。さらに、「点検の重要性を再認識できた」「知識が上がることで、安全性への意識がより高まった」という声もあります。
また、さまざまな職種の方たちが研修の合間にそれぞれの体験を例に、情報交換している姿も見られました。立場の違う方の話を聞くことは、点検という作業を別の角度から見ることができるので、それらの経験はこれからの作業に生きてくるのではないかと考えています。


検査点検コース受講者の
満足度アンケート調査結果

もう一つ、「E-MAC 」という最新の研修施設がありますが、その特徴を教えてください。


屋内に再現した半割りトンネル

加藤:こちらは、今年の5月に開設された研修施設で、実際の現場に近い形で実践的な研修を行えるのが大きな特徴です。たとえば、模擬的な訓練ができるように、高速道路で使用しているのと同じ種類の電気設備やトンネル非常用設備などを設置しています。実際に現場で使用されている機器に直接触れることで、点検の手順や方法、または機能停止が起きた際の復旧作業を学ぶことができます。また、橋梁の伸縮装置や打音点検実技パネルなどを設けることにより、土木・点検技術の習得ができる施設も設けています。
さらに、実際にトンネル内で点検を行う時には、狭い監視員通路や交通規制内で行うため、通行車両が近くを通り危険を伴う作業となっていますが、E-MAC では屋内に半割のトンネルを作り、できるだけ現場に即した状況を再現しながら、トンネル照明設備保守点検、トンネル非常用設備保守点検、トンネル非常用設備操作訓練および水噴霧設備点検車による測定訓練などを安全に学べるようにしています。


屋内に再現した半割りトンネル

技術者だけでなく、事務系社員にも研修を行うとのことですが。


安全文化醸成塾では、過去の映像資料を視聴しながら、
安全への気づきを醸成しています

加藤:E-MAC には、安全文化を自ら醸成し、企業風土として根付かせるために集い、共に学び、身につけることができるように「安全文化醸成塾」というコーナーを設けています。ここでは、過去の事故事例映像の視聴や現場体験者の声を通じて安全意識の向上を図っています。
安全文化醸成塾をはじめE-MACでは技術系社員だけでなく事務系社員も受講し、安全に対する気づきを養っていきたいと考えています。


安全文化醸成塾では、過去の映像資料を視聴しながら、
安全への気づきを醸成しています

研修終了後に、受講者からどんな声が上がっていますか。

加藤:「紙の資料で研修を行うのではなく、実際の設備機器を用いて訓練できるので、現場での作業がスムーズに行えるようになった」、「過去の事例を学ぶことで危険を回避するためのポイントに気づけるようになり、より安全への意識が高まった」などの声が届いています。

研修の講師として、日ごろから心がけていることはありますか。

加藤:「教える」ということは本当に難しい、というのが率直な感想です。ある上司に「人に教えるためには人の3倍勉強しなさい」とアドバイスされましたが、そのとおりだと思います。今は、とにかくもっと勉強しなくてはと自らを奮い立たせ、知識だけでなく、どう話せばわかりやすく伝わるかを日々考えて、実践しています。

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