1. 安全性向上3カ年計画の取組み報告
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  3. vol.09 新東名「浜松いなさJCT~豊田東JCT」開通。

安全性向上3カ年計画の取組み状況

安全、安心・快適をさらに向上させる、新東名の様々な技術と工夫

  • 東名と新東名のダブルネットワークがさらに延長します。

    東名と新東名のダブルネットワークがさらに延長します。

2020年の全線開通に向けて着々と工事が進む新東名高速道路(以下新東名) 。2016年2月13日には、いよいよ浜松いなさJCTから豊田東JCT区間の開通を迎えます。新東名は、東名高速道路(以下東名)とのダブルネットワーク化により、様々な効果が期待されており、日本の大動脈の要となります。そのため新東名には、お客さまに安全に、安心して快適にご利用いただけるよう、これまでに培われてきた様々な技術や工夫が施されています。

渋滞や事故を減らすために、カーブと勾配をもっとゆるやかに
高速道路では、カーブはできるだけゆるやかな方が、ドライバーへの負担が減り、事故も発生しにくくなります。また、勾配がゆるやかになれば、サグ部(下り坂から登り坂に差し掛かる凹部分)での渋滞が少なくなります。

  • 左:ロール式情報板 右:LED式情報板

    東名のカーブは最小半径を300mと規定していますが、新東名ではより運転をしやすくするため、最小半径を3,000mと規定しています。

  • 左:開通当時の道路管制センター 右:現在の道路管制センター

    東名の最大勾配は5%ですが、新東名の最大勾配は2%としており、ゆるやかで運転しやすくなっています。

走りやすさと耐久性を追求したコンポジット舗装
お客さまが車で長距離を移動されることが多い高速道路では、路面の快適性が求められます。そしてまた同時に、補修工事の回数をできるだけ少なくするために、強い耐久性が必要となっています。つまり、表面は走りやすく、その下はできるだけ頑丈に、という異なる特性を併せ持つ舗装技術の開発が必要でした。それがコンポジット舗装技術です。表層には騒音や振動が少なく乗り心地の良いアスファルト舗装を施し、その下層には耐久性に優れているコンクリート舗装を用いることで、快適性と耐久性の向上を同時に実現しています。また、表層には高機能舗装を使用し、雨天時の走行・視認性に優れ、高速走行時の安全性を向上させる効果も期待されています。

  • 左図:通常の舗装 右図:コンポジット舗装

    表層をアスファルトにすることで振動を低減し乗り心地を向上させると同時に、下層には頑丈なコンクリート舗装を施すことで、快適性と耐久性を同時に実現しています。

  • 小牧市の人口と製造品出荷額の推移

    高機能舗装(写真右側の路線)では、従来の舗装と比べて、舗装内にできるすき間に雨水が入るため水はけがよく、実際に雨天時の事故件数が多い区間で、交通事故が約8割減少したという区間もあります。

  • 車の進行方向と同じ向きに明かりを照射することで、走行時の前方への視認性が向上。適切な車間距離が取りやすくなりました。

    車の進行方向と同じ向きに明かりを照射することで、走行時の前方への視認性が向上。適切な車間距離が取りやすくなりました。

トンネル内の安全を照らす、新しい照明技術
トンネル内の視界は、照明によって確保されています。つまり、照明の進歩がトンネル内の安全を左右するといっても過言ではありません。そこで新東名では、新しい照明技術としてLEDライトによるプロビーム照明を採用しました。従来の照明のように真下を照らし路面を明るくするのではなく、照明の角度を進行方向へ傾け、前方を走る車へ明るさを集中。前方の車の視認性が高まり、適切な車間距離を取りやすくなりました。まさに、トンネル内の安全を照らす新しい照明技術なのです。

  • 左:ロール式情報板 右:LED式情報板

    従来の照明

  • 左:開通当時の道路管制センター 右:現在の道路管制センター

    プロビーム照明

最先端のIT技術で、迅速かつ的確な道路情報をご提供
新東名では、CCTVカメラで道路状況を24時間体制で撮影・解析しています。事故など路面状況に異常が発生した場合にはそれを自動的に感知し、道路管制センターを経由して事故現場より手前の情報板やITSスポット(道路に高速・大容量で双方向通信が可能なアンテナが設置されている箇所)対応のカーナビへ瞬時に情報提供が行えるようになりました。最先端技術の導入により、落下物などの障害物を、できるだけ早くお客さまにお知らせすることが可能になり、二次的な事故の発生を未然に防ぐことができるようになりました。


自動事象検知による情報の提供システム図

「新東名の建設工事においても、安全性向上3カ年計画に基づいた安全対策に取り組んでいます」
  • NEXCO中日本
    豊田工事事務所 舗装工事班
  • 矢吹 太一
  • 新東名の舗装工事や標識工事などを担当。
  • NEXCO中日本
    豊田工事事務所 施設工事班
  • 簗瀬 健太
  • 新東名において情報板などの設置工事やサービスエリアのトイレ建設などを担当。

今回開通する新東名ではどのような安全対策を実施していますか

トンネル内の照明灯具やジェットファンなど、道路上に設置する構造物について、ワイヤー取り付けなどの二重の安全対策を実施しています。また新東名の料金所では、照明の設置位置にも配慮し、アイランド(料金徴収の機械が設置されている場所)上に設置し、車線にはみ出さないようにしました。また、サービスエリアのトイレについては、通常の建築基準を満たすことはもちろん、空調設備や天井などの落下を防止する部材の追加といった、二重の安全対策を実施しています。
標識についてもこれまで以上に安全に配慮し、たとえば万が一落下しても影響のないよう車線にはみ出ない場所に設置したり、ワイヤー取り付けによる二重の安全対策を実施しています。

  • 照明灯具などは万が一取付金具が外れても落下しないようにワイヤーを設置しています。

    照明灯具などは万が一取付金具が外れても落下しないようにワイヤーを取り付けています。

  • ジェットファンは、取付金具を二重に施工して落下防止に努めています。

    ジェットファンは、取付金具を二重に施工して落下防止に努めています。

  • 標識については、万が一標識が支柱から外れたとしても道路上に落下しないようワイヤーを取り付けています。

    標識については、万が一標識が支柱から外れたとしても道路上に落下しないようワイヤーを取り付けています。

落下物の防止対策として、その他にどのようなことを実施していますか

コンクリート打設の際に繊維シートを入れることで、コンクリート同士の結合を強化して落下を防ぎます。
コンクリート打設の際に繊維シートを入れることで、コンクリート同士の結合を強化して落下を防ぎます。

橋の下に交差する県道などがある場合は、コンクリートのはく落対策を実施しています。対策のためにコンクリートを打設する際、はく落防止のための繊維シートをコンクリートと一体化させるように施工して、コンクリート片が落ちないような対策をしています。

新東名で採用されているその他の安全対策についてお聞かせください

新東名には、これまでNEXCO中日本が培ってきた様々な安全対策を取り入れています。たとえば、少しでも早くお客さまに事故や落下物をお知らせするため、簡易情報板を1kmごとに設置したり、霧発生時にドライバーの視線誘導が行えるよう気象観測設備と連動した自発光デリニエータを設置するなど、新しい技術を積極的に取り入れています。そのほかにも、太陽光によって裏側が反射しないような塗装や見落とし防止のため逆光対策を施した標識の設置、事故などで車両が反対車線に飛び出さないようにするための中央分離帯のコンクリート化など、さまざまな安全対策を隅々まで行っています。また、長大のり面などでは落石などが高速道路区域外から入ってきても安全なように、堅固な落石防護柵を設置しています。

・霧や悪天時の視線誘導のため自発光デリニエータを設置

  • 霧や悪天時の視線誘導のため自発光デリニエータを設置

・裏側が反射しないような塗装を施した標識

  • 裏側が反射しないような塗装を施した標識

・事故車両が反対車線に飛び出すことを防ぐ中央分離帯

  • 事故車両が反対車線に飛び出すことを防ぐ中央分離帯

・大きな落石があった場合でも耐えることができる落石防護柵

  • 大きな落石があった場合でも耐えることができる落石防護柵

安全の維持管理という観点ではいかがでしょうか

安全を維持、管理していくうえで重要なのが、その"しやすさ"です。点検のためのアクセスをより"しやすく"し、点検自体を"しやすく"することで、安全の維持・管理の精度をこれまで以上に高めています。具体的には、建設段階から保全部門をはじめグループ会社一体となって取り組んだTQM(Total Quality Management)の一環として、のり面や橋桁内に階段を設置したり、立入防止柵に簡易出入口を設置するなど、お客さまにとっての安全性向上はもちろん、点検や補修のしやすさの向上に取り組んでいます。そのほかにも、橋桁内のLED照明設備の設置など構造物の点検をしやすくする方策をはじめ、車線を跨いでしまうような標識については、1車線のみの規制で点検や取り外しができるよう、走行車線と追越車線の境界で左右に分割したり、人が直接点検できるようにするため点検用通路の設置などを実施しています。

・のり面を点検するために設置された階段

  • のり面を点検するために設置された階段

・橋桁内を明るくし、構造物の視認性を高めるよう設置されたLED照明

  • 橋桁内を明るくし、構造物の視認性を高めるよう設置されたLED照明

・車線を跨がないよう左右に分割された標識板

  • 車線を跨がないよう左右に分割された標識板

・出入りをしやすくするため立入防止柵に設置された簡易出入口

  • 出入りをしやすくするため立入防止柵に設置された簡易出入口

最後に、新東名に対する安全への想いをお聞かせください

私たちは自発的に安全のためにあるべき対策を見出し、積極的に取り組んできました。このように、新たな安全対策を自分たちで設定し、新規の高速道路建設に携われたという経験は何物にも代えがたい私たちの財産です。これからはこの知見を活かし、新東名の維持管理を徹底していくことはもちろん、既存の高速道路に新しい安全対策を導入していくなど、高速道路全体の安全性向上に、より一層取り組んでいきたいと思います。そして、そうしたノウハウを次の世代へつなげ、50年先も100年先も、安全で、安心・快適な高速道路空間の構築に携わっていきたいと考えています。

新東名の開通がもたらすメリット

これまでに培われてきた様々な知見や技術の粋を集め、安全で安心、快適な高速道路環境を目指して造られている新東名。この新たな日本の大動脈の更なる延長によって、さまざまなメリットが期待されています。特に、東名とのダブルネットワークによる恩恵は、お客さま、そして日本経済にとって大きく、慢性的な渋滞が緩和され、また災害時や大規模な工事規制の際には互いの代替ルートとなり緊急輸送路として機能します。

  • 迅速な情報提供が、事故やトラブルを未然に防ぐことにつながります。