1. 安全性向上3カ年計画の取組み報告
  2. 取組み状況一覧
  3. 「安全な高速道路をお届けしたいという思いは、開通後も変わりません。」

安全性向上を担うNEXCO中日本グループ社員

「安全な高速道路をお届けしたいという思いは、開通後も変わりません。」

  • 岡田 尚久
    敦賀工事区
    工事長岡田 尚久
    担当区間は、敦賀JCT(ジャンクション)から美浜町と若狭町の境まで約20km。
    橋梁22橋、トンネル4本。
    営業中の北陸道との接続工事を担当。
  • 稲垣 太浩
    若狭工事区
    工事長稲垣 太浩
    美浜町と若狭町の境から小浜IC(インターチェンジ)まで約20kmの区間を担当。
    橋梁14橋、トンネル10本。
    軟弱地盤工事を担当。

いよいよ、舞鶴若狭道が開通します。今の心境をお聞かせ下さい。

岡田:安堵の気持ちがあると同時に、まだまだこれからだという思いが胸にあるのも事実です。開通は工事の完了ではなく、一つの通過点にすぎません。開通後、何のトラブルも起きないことこそが私たちの願いです。

稲垣:近隣の皆さまのご協力があってこそ開通を迎えることができるのだということを、改めて感じています。今は、工事の最終段階ですが、側道や水路を地域のお役に立つよう、しっかりと仕上げたいと思います。舞鶴若狭道ができて便利になった、良かったと地域の皆さまに感じていただけるよう開通まで細心の注意を払って工事を進めていきます。

担当された地区の工事で、留意した点は何でしょうか。


笙の川をまたぎ、JR北陸本線や
送電線と交差する敦賀衣掛大橋

北陸道と接続する敦賀JCT

岡田:私が担当した区域に流れる川はとてもきれいです。下流でも川底が見えるほど水が澄んでいます。地域の皆さまも、そのことをとても誇りにしていらっしゃる。ですから、できるだけ工事の影響で川の水が濁らないようにと慎重に工事を進めてきました。特に、水に流されやすい強風化花崗岩(きょうふうかかこうがん)を多く含む箇所は崩れやすいので、常に気象情報をチェックして、少量の雨でも現場に異常が起きていないかどうか、すぐに巡回するようにしていました。この箇所の工事はすでに完了し、将来の水害に対してもしっかりとした対策を施すことができました。

また、川の水や強風化花崗岩への対策に匹敵するほど注意を必要としたのが、敦賀衣掛大橋の建設です。それは、JR北陸本線をまたぐように架けた橋梁で、ボルト一つ落としても電車事故を引き起こす危険性をはらんだ箇所。さらに、送電線も接近しているので、クレーンの操作を誤ると送電線を切ってしまう危険があります。そんな厳しい作業環境の中、工事従事者一人ひとりが、小さな動作のひとつひとつにまで神経を張りつめて工事を行いました。

それともう一つ、私は営業中の北陸道と接続する敦賀JCTの建設も担当しましたが、北陸道を通行されるお客さまの安全を確保しながら、4回の車線の切替えを行いました。切替えの際は、規制作業を行いながら実施するため、大勢のスタッフが息を合わせた作業ができるよう綿密に準備し、また工事の際もすぐ脇を通過する北陸道の走行車両に影響がないように細心の注意を払いました。


笙の川をまたぎ、JR北陸本線や
送電線と交差する敦賀衣掛大橋

北陸道と接続する敦賀JC

軟弱地盤への対策に苦慮されたとお聞きしています。


排水工法の試験の模様

稲垣:工事の前に土質調査を行った結果、50mの深さまで掘り進めても、そこから水が噴き出してしまうぐらい土中の水圧が高く、多くの水が含まれていて、かなり軟弱な地盤であることがわかりました。そこで、一般的な軟弱地盤対策では、不十分であると判断。新たな沈下予測方法や地盤改良方法の導入を決めました。

まず、軟弱地盤対策の排水工法として3種類の試験を行い、そのうち最も有効なカードボードドレーン工法※を採用しました。次に、地盤中の水をより早く効率的に抜くために真空圧密工法も採用。これは、真空ポンプを使って強制的に排水を行う工法です。さらに、名古屋大学地盤研究グループが開発した『GEOASIA(ジオアジア)』という最新の地盤解析ソフトを採用。これにより、これからどのぐらい地盤が沈下するかを精緻に予測し、長期にわたって大きく沈下する箇所は沈下を抑制するために盛土の軽量化を図りました。
※カードボードドレーン工法・・・軟弱地盤中に人工の鉛直ドレーン(排水管)を多数設置。排水距離の短縮を図り、圧密を促進させる工法。


排水工法の試験の模様

これから舞鶴若狭道の安全を担う、維持管理を担当する社員に何を伝えたいですか。

岡田:たとえば2013年9月の台風18号の際に水がどこをどれぐらい流れたのかなど、工事中に起きたことをできる限りデータにして引き継ぎたいと考えています。また、工事現場の下流地域には沢の水を飲み水として利用している方がいらっしゃることや、蛍が生息するビオトープがあることなど、近隣の皆さまの生活に関わることもしっかりと伝えたい。高速道路の維持管理には、そういう情報こそ必要だと思います。

稲垣:私は今、軟弱地盤の対策として行ったことを詳細にデータ化しています。維持管理を担当する社員に伝えることはもちろん、NEXCO3社共通の研究機関である「高速道路総合技術研究所」に情報提供することで、将来の日本や世界の軟弱地盤における高速道路建設の一助になればと願っています。

「安全性向上3カ年計画」を推進していく上で、ご自身が日々、心がけていることを教えて下さい。

稲垣:私たちの仕事は工場で物をつくるのとは違い、自然と対峙し構造物を建設しています。舞鶴若狭道の建設でも、私自身、異常出水など自然の脅威を思い知らされたことがありました。だからこそ、自然と真摯に向き合い、学ぶという姿勢を大切にしていきたいと考えています。舞鶴若狭道での経験を糧に、さらに技術を磨き、安全性を向上させるよう努力していきます。

岡田:気象条件や地理的条件など、現場の状況を踏まえて臨機応変に対応することが大切であると考えています。どんなに小さな「気づき」でも、社内で共有して、実際の高速道路に反映する。そういう意識を持って工事に臨んでいます。さらに安全に対して、常に自分が考えるベストを尽くすよう心がけ、率先して動くこと。部下の一人ひとりにも、この意識を徹底してほしいと、機会があるたびに話しています。

岡田・稲垣:舞鶴若狭道の建設にあたり、近隣の皆さまには多大なるご理解とご協力をいただき、ありがとうございました。工事が完了しても、定期的な点検をはじめ安全に対するさまざまな努力を続けていきます。これからも、舞鶴若狭道をどうぞよろしくお願いいたします。

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