思春期の息⼦と

息子は、食事も、言葉も、運動も、同じくらいの歳の子供より
成長がゆっくりしているように感じていた。
初めての参観日、一年生の教室で、生徒が一斉に手を上げた時、
息子だけは宙を見ていた。
私は、心臓がバクバクして、息子に苛立った。
そして、この世の中で息子がどうなっていくのかを想像して不安になった。
夫はよく、息子に何かあると「大丈夫。」というが、私の心配は止まらなかった。
息子は、ゆっくりだが、一度覚えるとしっかりと覚え深く理解しようとそこに留まる。
器用で要領よく立ち回る私と違う。夫に似たのだ。

人懐っこく、天真爛漫だった息子が、中学生になって少し静かになった。
中学から夫の実家へ引っ越したせいもあるのかもしれない。
東京のマンションでは自分の部屋がなかったが、
こちらで新築した家に、個室ができたこともある。
寂しいのか、小学校から一番の仲良しだった東京の友達と、
ずっとスマホしたり、オンラインゲームをしたりして過ごしている。
本当は小学校に入学するところから引っ越すべきだったのではと少し後悔している。

子供は自分とは違うのよ、と母が言う。
「あなたは何ひとつ思い通りにならなかった」と。

夫の言う通り、きっと大丈夫なのだろう。

深夜2時

夫は、私と同じ専門学校の写真学科だった。
夫の友達が私と同じダンスコースの学生だったので、お互いを知った。
卒業して、彼は撮影スタジオで働き始めた。
写真を撮りに出かけるとき、私も時々一緒に行った。
私はダンスを諦め、スポーツクラブに就職しピラティスの
インストラクターのライセンスを取得した。
妊娠したのはちょうどその時期だった。

夫は撮影スタジオを辞め、運送会社に就職を決めた。
人生で貯金をしたことがないので、貯金をしたいと言った。
お腹が大きくなっていっても、私はどこか後ろめたく感じていた。
あのまま彼がずっと写真家を目指せていれば別の人生があったのだろうと。

今、私はピラティスのインストラクターとして働いている。
子供はもうすぐ小学生になる。
夫は今もよく写真を撮っている。
ほとんどが高速道路のサービスエリアで撮る風景や食べ物の写真で、
あとは荷下ろしをする場所の人を撮っている。
時々夫の写真を見て、やっぱりこの人の写真は素晴らしいなと思う。

いつか彼が言っていた。
トラックの運転手という仕事は「旅をしているようだ」と。
旅に出ると、いつも考えるのは日々のことばかり。
些細なことを思い出しては、
自分の居場所の温かみを感じて早く帰りたくなると。

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独り⽴ち

バスの時間がもう少し遅ければ、見送りに行くこともできたのだが店を離れられない。
夫は、この日のために店を閉める人であった。
夫と娘は毎朝神社まで走り、一緒に階段で筋トレをした。
娘の試合も夫は遠くても必ず見に出かけ、データを収集した。

高校が夏休みになっても、全国大会常連のバレー部の練習に休みはなく、
こちらに帰れることはしばらくないらしい。推薦の面接でも、バレーボールは勿論だが、
勉強の方をおろそかにすることは決してないという話があった。
同じ高校を卒業した全日本のリベロは、３年間一度も実家に帰らなかったらしい。

今朝、娘の一番好きな具の炊き込みご飯を炊いた。
ふと、寮に入ると好きなものなど全く食べられないのでは、と気の毒になった。
（娘は私に似て好き嫌いが多いのだ）
それでも寮のご飯はちゃんと栄養管理がされているし、
都会のプロの料理人が作るのだ。むしろうちのご飯より美味しいのではないかと笑った。
そういえば、あの子はいらないと言ったけど、
無理矢理にでもあんころ餅を持たせればよかった。
今頃はもう、お腹が空いているだろう。

私はこの山に囲まれた町を出たことがない。
もう一緒に暮らすことはないのかもしれない。
永遠の別れではないではないか、会いたくなったらいつだって道は繋がっている。
さあ、手を止めないで。私もしっかりしなくては。

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with a little happiness
NEXCO中日本企業CMテーマ曲

歌詞 Where you go, the setting sun will shine
Flowers blooming in the breeze with each step you take
And as you climb ever upon your mountain
It whispers words of trust to you

訳 どこへ行っても　夕日はあなたを照らし続ける
一歩ずつ歩を進めるたび　風に揺れる花々が咲き乱れ
あなたが山を登るごとに
信頼の言葉が囁かれる

作詞：カート・ジェセン（Kurt Jessen）
作曲：いしいゆうこ
歌唱：エリ・リャオ（Eri Liao）

with a little happiness ささやかな幸せのそばに

SCROLL DOWN

なにげない会話の中で、ふと見た景色の中で、
幸せは気づかれるのを待っている。
特別じゃなくても、大きくなくても、
ココロがほんのり温かくなったなら、
それはひとつの幸せ。 小さな胸の高鳴りに耳を澄ませ、
かすかなときめきにも目を凝らしてみる。
私たちは思う。
ささやかな幸せを大切にできたなら、
日々はもっと豊かになると。 この道を走っているのは、クルマだけじゃない。
やさしさや、好奇心や、目に見えない想いが
たくさん走っている。
感動をつなぐために、ぬくもりをわかち合うために。

NEXCO中日本企業CMテーマ曲
「with a little happiness」

ささやかな幸せのそばに

高速道路でのささやかな幸せを描いた物語。

思春期の息子と編 Story01

思春期になってコミュニケーションが
難しくなった息子のことを気にする母。
そんな母の心配をよそに、息子はゆっくりと、
しかし確実に成長していた。

思春期の息子と編のサムネイル
北陸自動車道入善PA（上り）の写真

ロケ地

北陸自動車道　
入善PA（上り）

深夜2時編 Story02

深夜におよぶ仕事も、
笑顔をくれる家族がいるから頑張れる。
ほら、今日もどこかで
癒やされている人がいる。

「深夜2時」編のサムネイル
北陸自動車道徳光PA（下り）の写真

ロケ地

北陸自動車道　
徳光PA（下り）

独り⽴ち編 Story03

夢を追いかけて都会へでていく娘。
でも大丈夫、永遠の別れじゃない。
会いたくなったら
いつだって道はつながっているから。

独り⽴ち編のサムネイル
北陸自動車道城端SA (上り) 高速バスのりばの写真

ロケ地

東海北陸自動車道
城端SA (上り)
高速バスのりば

a little episode of happiness

高速道路と私
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