1. 安全性向上3カ年計画の取組み報告
  2. 取組み状況一覧
  3. 「安全性向上3カ年計画において、新技術の開発という大きな役割を担っています。」

安全性向上を担うNEXCO中日本グループ社員

「安全性向上3カ年計画において、
新技術の開発という大きな役割を担っています。」

  • 加藤 雄三
    NEXCO中日本
    技術・建設本部 環境・技術企画部 技術開発チームリーダー東 晋一郎
    安全性向上のための技術開発をさまざまな研究機関や企業、大学と協力しながら、取り組んでいます。

現在、どのようなテーマで技術開発に取り組んでいますか。

東:技術開発チームでは、NEXCO中日本が進めている安全性向上3カ年計画に基づき、新たな点検技術の開発を重要課題として積極的に取り組んでいます。その中で強く感じたのは、熟練技術者の点検技術の精度は非常に高いという点です。ですから新技術は、人による点検をフォローする方向で開発を進めています。たとえば、コンクリートの内部や直接見ることができない箇所、高所作業車を使わなくては近接目視ができない箇所などの点検をするための機器などが開発テーマとなっています。
また、人による点検は車線規制や通行止めが必要なことも多く、作業には時間がかかります。そこで、走行しながら点検作業を行える機器の開発にも取り組んでいます。人による点検を補い、コンクリートのひび割れなどを継続して計測することで損傷の進行が把握できれば、より的確な時期に補修を行うことができ、高速道路の維持管理に貢献できると考えています。
さらにもう一つ、トンネルの天井にジェットファンなどを吊り下げて固定するためのアンカーボルトの支持力など、劣化の進み具合を機器によって数値化することにも取り組んでいます。数値によって客観的に評価することで劣化状況のランク付けが明確になり、補修計画の優先順位もつけやすくなると思います。

点検技術以外に、どのような技術の開発に取り組んでいますか。

脳活動の可視化の状況(ΔCOE:脳酸素消費変化)
ドライバーの脳における酸素の消費量の変化を可視化しています。加速中はあまり酸素を消費しない鎮静状態(青色の状態)、減速時には緑~赤色に変化し、脳活動が緊張によって多くの酸素を消費していることが分かります。

東:東京大学生産技術研究所や株式会社脳の学校と共同で、脳科学の視点から交通安全対策のための技術研究をしています。これは、脳機能近赤外線分析測定法fNIRS(エフニルス)という装置をヘッドギアのようにドライバーの頭部に装着し、脳の酸素消費量の変化を通して、高速道路を走行する際の脳活動を可視化するというものです。
たとえば、減速している時には脳は活性化し酸素交換量が増加します。これは右図で赤、黄で表示されています。加速している時は脳の活動が低下し、酸素消費量も低下し、右図では青で示されています。加減速により脳活動に違いがあることがわかっています。さらに研究が進み、脳の活動が詳細に解析できるようになれば、標識や情報板が目に入りやすくわかりやすい表示になっているかを客観的に評価することができ、より効果の高い交通安全対策を実施することが可能となります。

また、道路脇に設置した発光機器の点滅を制御して、光が走っているように見せることで、ドライバーの速度感覚をコントロールし、走行速度を制御するシステム(べクション)の研究も進めています。このシステムにより、光の走行速度を適切に設定することでサグ※での速度低下防止に効果があることがわかっていますし、下り坂での速度抑制についても、効果を出せるのではないかと研究中です。このようなシステムで、安全で快適な走行を、より高いレベルでサポートできるよう研究を進めています。
 ※サグ…道路における下り坂から上り坂への変化点。

脳活動の可視化の状況(ΔCOE:脳酸素消費変化)
ドライバーの脳における酸素の消費量の変化を可視化しています。加速中はあまり酸素を消費しない鎮静状態(青色の状態)、減速時には緑~赤色に変化し、脳活動が緊張によって多くの酸素を消費していることが分かります。

技術開発という仕事に対する想いをお話しください。

東:私たちには、点検を通して蓄積してきた構造物の劣化などに対する膨大なデータや高速道路建設で培われた土木技術への知見があります。これを研究機関や民間企業が取り組んでいる先端技術と融合し、橋梁やトンネルといった実験などを行う場を提供しながら、新たな技術開発の可能性を探っています。
これからも、さまざまな研究レポートに目を通し、メーカーの研究発表会に足を運んで情報を収集し、私たちの安全性向上への取組みとのマッチングを図りながら、一歩一歩進んでいきたいと考えています。安全で安心な高速道路を維持していくために、私たちが担っている役割は非常に重要だということをしっかりと自覚し、これからも開発に取り組んでいきます。

取組み状況一覧

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